第31章 忍び寄る終焉※
「珠世さんは何の用事で来たの?」
そもそも珠世さんが出向くなんて余程の急用があったのだろう。隣でニコニコと笑顔のほの花にそう問えば、少しだけ眉を下げた。
「あー、うん…それがね。私の血が変化するらしくて、その確認のために採血しに来たみたい。」
「血が変化する?」
ほの花は稀血と言う部類らしくて、その血は鬼に対して毒になる物のようで珠世さんが調べているそうだ。
変化をすると言うのは効力が変わると言うことなのか、ほの花の表情が困ったような顔になったので聞いていいのか迷った。
でも、わざわざ俺に報告に来てくれたのだから良いのだろう。彼女の言葉を待っているとおずおずと話してくれた。
「そう、私の体調が悪ければ悪いほど効力が上がるみたい。何度か体調不良の時に採られた血が通常時と全然違ったらしいの。それで気付いたんだって。だからもう一度体調が悪い時の血が欲しいって。」
「え…!そうなんだ…。でも、そんな都合よく体調悪かったの?」
「そんなわけないよ〜!体調悪かったら師匠が絶対に行かせてくれないよ。頗る健康でした!」
ああ、何となくほの花が眉を下げた理由が分かった気がした。その時、色々あったんだと勝手に予測することができる。
体調が良い時に、良くない時の血が欲しいって…嫌な予感しかしない。
「それで毒を飲んで強制的に体調不良にして採血してもらったの。もちろんすぐに解毒剤飲んだけどね。」
「どどど毒?!え、だ、大丈夫なのか?!」
「うん。大丈夫大丈夫。すぐに解毒剤飲んだから。」
ほの花は本当にあっけらかんと話すけど、それって凄いことだと思うんだけど…
良くも悪くもほの花は自分の体に無頓着だ。
薬師だから当たり前かもしれないけど、人の体のことには真剣に向き合うのに自分のことには気にしていない。
良くいえば無頓着だけど、悪くいえば自分の命を軽んじている気がする。
だから音柱って人はほの花を溺愛して、大切にしてるのかもしれない
他の人に聞いても彼がほの花を大事にしてると言う話は有名なようで、ほの花の体からはいつもほの花じゃない人の匂いがする。
きっと音柱の匂いなんだと思う。