第31章 忍び寄る終焉※
ほの花から風柱という名前を聞いて、ムッとしてしまったが、彼女からは焦りの匂いがした。きっとほの花は風柱という人を悪い人だと思っていないのだろう。
俺はあの時、禰󠄀豆子を斬ったことが許せなくて、謝ってもらいたい一心だったけど、他の人からすれば鬼を連れている俺の方が異質であって彼を支持する人もいるのだろう。
(…でも…!禰󠄀豆子を斬ったのは許せないぞ…?いや、俺は長男だ…!此処は穏便に…!)
心の中で身の振り方を必死に考えているとほの花が気を利かせてくれたようで、話題が変わった。
「あー…それは置いといて…、この前不死川さんとね、任務に行ったんだけど、その時にまた珠世さんに会ったよ。」
「えええ?!た、珠世さんは無事?!あの人、ぶった斬らなかった?!」
鬼に強い殺意があるようで、風柱って人は鬼に対して手厳しい。もちろん俺も家族を殺されて、禰󠄀豆子を鬼にされたんだ。憤りはあるけど、あの人は容赦ない。
少しの慈悲情けもない強い殺意を感じる。
それは良鬼である珠世さんにも向けられるのは必至で俺は迷わず珠世さんの安否を心配してしまう。
「うん。私は医療班として行ってたから少し離れたところで待機してたの。その時に珠世さんが来たから彼女達は大丈夫だよ。」
「あ…医療班…、そっか。ほの花、薬師だもんね?」
「そうそう。人手が足りなくて駆り出されたの。医学の知識がある医療班の確保が難しいらしくてうちの師匠に頼んで私が行くことになったんだ〜。」
あっけらかんと話すほの花だけど、ご指名で連れて行かれるなんて凄く信頼されている証だ。でも、確かにほの花の傷薬は凄く良く効くから納得できる。
容姿端麗で強くて、しかも薬師としての腕も一流。柱にも目をかけられるほどの逸材なのに少しも偉ぶってなくて優しいほの花。
珠世さんとのことを最初に話されたとき、驚いたけどこうやって情報を共有してくれると信頼してくれていると分かって嬉しい。
分け隔てなく誰にでも優しいほの花を見ると音柱が何故彼女を好きになったか理解できるけど、怪我をしたことを少しも気に留めていないところを見ると心配でヤキモキしてしまいそうだな…と人知れず苦笑いした。