第31章 忍び寄る終焉※
「炭治郎〜!!」
「あ、ほの花!あれ?怪我したの?!足…!」
玄弥と別れた私は炭治郎がいそうなところを探した。
するとこの前、話をした縁側で直ったばかりだろう日輪刀を陽の光に当てて見上げていた。
しかし、声をかけた私の太腿に巻かれた包帯を見るや否や心配そうに屈んでくれた炭治郎を慌てて制する。
「あはは!大したことないの。炭治郎はすっかり良さそうだね!!」
「そう?音柱の人も心配してたでしょう?ほの花は女の子なんだから傷をつけたら駄目だよ〜」
炭治郎の顔は物凄く真剣だけど、こちとら鬼殺隊士だし、怪我くらい当たり前だ……と思っているのに炭治郎も含めて男性はなぜ女子が怪我をすると此処まで心配してくれるのだろうか。
宇髄さんはその最たる例で、私以上に私の体のことを心配してくれる。いや、心配しすぎだと思う。
「大丈夫大丈夫〜。それよりね、炭治郎に話があったの。今いい?」
「俺に話?うん!大丈夫だよ。足大丈夫?座れる?」
ただ縁側に座るだけだと言うのに手を差し出してくれる炭治郎は本当に優しい。
この子の心は本当に澄み切っていて美しいとすら感じる。
本当は立ったり座ったりの屈伸運動すら余裕でできるのだが、素直にその手に掴まると縁側に腰掛ける。この優しさを無碍にすることの方が憚られると言うものだ。
「ありがとう!あ、ねぇ、話とは関係ないんだけど…最終選別の時に出会った不死川玄弥って覚えてる?」
「ああ!!あの、女の子殴ってた!さっきすれ違った!」
「炭治郎も?私もすれ違ってさ、取っ捕まえて話したんだけど、あの子って風柱の不死川さんの弟さんみたいだね。」
「へぇー、風柱…?ああ!禰󠄀豆子を斬った?!」
あ、ヤバい。
そうだった…。炭治郎からしたら不死川さんは宿敵だった。
妹の禰󠄀豆子ちゃんを斬りつけられて怒っていたのをこの時思い出してしまい、自分の配慮の足りなさに頭が痛くなった。
いくら自分が兄のように慕っているとはいえ、彼に取っては極悪人にしか見えないのだろう。
私だって炭治郎の立場ならそう思うかもしれない。
でもね、炭治郎…不死川さんは本当はとても優しい人なんだよ。いつか分かってくれたら嬉しいな。