第31章 忍び寄る終焉※
「辛辣ねぇ。私は音柱様の継子なのよ?近寄ろうにも指示がなければ任務だって一緒に行かないから安心して。」
「……兄貴にはもっと淑女が似合うんだ。お前みたいな男好きには勿体ねぇから二度と近づくなよ。」
つい最近も同じような悪口を言われたけど、瑠璃さんはもういないし、その苦言すら懐かしく感じた。
最後らへんはお姉ちゃんみたいに慕っていたし、瑠璃さんが私に酷いことを言うことはなくなっていたから。
「お前じゃなくてほの花だってば〜…」
しかし、私の声が届いたかどうかは分からない。
捨て台詞のような言葉を吐いた後、玄弥は踵を返して去ってしまったから。
不死川さんもたまに導火線が短いときがあるけど、そういうところは玄弥と似てるのかな。
それでも不死川さんの話をしていたときの玄弥はピリピリとした空気感は消え失せて、少年のようだった。
結局、大した話もできなかったけど、私も炭治郎に会うために再び歩き出す。
鬼にされた妹を人間に戻すために頑張っている炭治郎。
そして私もまた鬼舞辻無惨の弱点となるべく自分の稀血を調べてもらっている。
その協力相手は鬼である珠世さん。
つい先日、その話を炭治郎と共有してからと言うもの心が随分と楽になった。
大好きな宇髄さんにもそんなことは言えないし、
信頼しているしのぶさんにも、不死川さんにももちろん言えない。
鬼を連れている炭治郎があれだけ糾弾されたのだ。
鬼に協力していると知られたらきっと斬首だ。
そして…宇髄さんだって処分を受けるかもしれない。
それだけはどうしても避けなければならないこと。
産屋敷様も珠世さんのことを知っているようだったから、ひょっとしたら公認の良鬼ということならば話は別だが、今の時点では分からないし、産屋敷様に確認するのも時期尚早だろう。
本来の私は嘘をつけばすぐにバレてしまうほど馬鹿正直な女だ。
そんな私が雁字搦めになるほど嘘で塗り固められた生活を送ることになるなんて思いも寄らなかった。
誰に言い訳するわけでもないけども、ただそこには鬼に対する憎悪がなくなったわけではなくて、鬼舞辻無惨を倒すと言う共通目的のためならば良鬼であるならば協力し合うのも一つの手だと思っただけのこと。