第31章 忍び寄る終焉※
「不死川さんはね、前にも一緒に任務に行ったことあるんだけど、本当にいつも優しいんだ〜!私が音柱様の継子だって言うのもあったと思うけど、いつも気にかけてくれる優しいお兄ちゃんみたいな存在なの!」
宇髄さんも長男だし、男気があって豪快な性格なところは頼もしいけど、また不死川さんは違った感じで頼もしい。
長男同士だから不死川さんと宇髄さんは割と仲が良い気がするし、私にとっては上官と言うだけでなく本当の兄のように感じる瞬間もあった。
「私もね、実は四人兄がいたの。でも…両親と共に鬼に殺されてしまった。そのことを不死川さんに話したら実の兄のように慰めてくれたの。」
確かあの時、稀血のことも教えてもらった。
それで私も自分の稀血のことを不死川さんに話したんだった。
馬鹿にせずに、親身に話を聞いてくれる不死川さんは本当にお兄ちゃんと言う言葉がピッタリだ。あの日、陰陽師のことを話したときも私の話を真剣に聞いてくれた。
「境遇が似てるから気にしてたって言ってくれて嬉しかったなぁ。音柱様はもちろん大切な存在だけど、不死川さんも私にとってはお兄ちゃんみたいでとても大切なんだぁ。」
「…っ、お、俺の兄貴だ!!お前のじゃねぇ!!」
「え?!やっぱり不死川さんの弟だったの?!」
「うるさい!!お前がしつこく兄貴の話するからだろ!?音柱様がいるくせに、浮気女!」
余程、不死川さんのことが好きなのか、"お兄ちゃんみたい"と言っただけなのに、随分な言い草だ。
「失礼しちゃうわね。私は浮気なんてしてないわ。音柱様のことは愛しているけど、不死川さんはお兄ちゃんみたいだって言っただけじゃない。」
「俺の兄貴を誑かすんじゃねぇぞ!!無駄に綺麗な容姿しやがって!音柱様もそれで誑かしたんだろ!」
「え、綺麗…?えへへ。ありがとう。」
「そっちじゃねぇ!とにかく兄貴に近づくなよ?!分かったか?!」
玄弥のあまりの形相によほど不死川さんのことが好きなのだろうと笑いが込み上げた。
いいな、兄弟って。
私にはもういないけど、やはり血の繋がりほど強固な絆はない。
宇髄さんとはいくら愛し合っていても、きっと壊れるときは一瞬で壊れてしまう。
私たちはまだ家族じゃない。
恋人なのだから。