第31章 忍び寄る終焉※
煉獄さんが帰った後、私はしのぶさんの言いつけ通りに怪我の状態を見せるために蝶屋敷にやってきていた。
既に痛みもなく、元々歩行に支障はなかったので見せる必要もないとは思ったが、しのぶさんもまた私のついた嘘に気づいているのだろうか。
あの場では丸く収めてくれたけど、予後を見せろと呼んだのはそのためもあるのかもしれない。
しかし、野暮用があるとのことでしのぶさんは不在。アオイちゃんに屋敷で待たせてもらう旨を伝えて廊下を歩いていると見覚えのある人が前から歩いてきた。
どうせなら珠世さんに会ったことを炭治郎に話そうと思って彼らの病室に向かっていたのだが、此処で見るのは初めての彼だが、確実に何処かで会ったことがある。
必死に記憶を手繰り寄せていると前から来た彼も私に気づき目を逸らされたことでハッとした。
(…そうだ、最終選別の時の…?)
彼が不死川さんの弟ではないかと思って聞いたことがあったけど、最初は弟はいないと言っていたけど、その後生きてる弟は"1人"と教えてくれた。と言うことはやはり彼は弟?
(…やっぱり似てる。)
顔も似てるし、何より彼も"不死川"という苗字だった筈。
兄弟でなくとも遠い親戚が何かだろう。
雛鶴さんと瑠璃さんは遠縁らしいけど、あまり似てない。だけど、遠い親戚だけど似ているという場合もあるかもしれない。
目を逸らしたまま横を通り過ぎようとした彼の腕を掴むと声をかけた。
「ねぇ、不死川くん!久しぶり!私のこと覚えてる?下の名前って玄弥だったっけ?」
「し、知らねぇ!!離せ!!」
「え?忘れちゃった?!私、最終選別の時一緒だった神楽ほの花だよ!元気だった?」
「し、知らねぇって言ってるだろ!!」
顔を真っ赤にして腕を振っている不死川くんだけど、やはり見れば見るほど不死川さんに似てる。心の中でさえ、不死川"さん"と不死川"くん"じゃややこしい。
「ねぇ、玄弥でいい?私のこともほの花でいいよ!」
「勝手に話進めてんじゃねぇよ!!このクソ女!!」
「クソ女って酷いなぁ、私はほの花!神楽ほの花だよ!覚えてね?」
「は、離せぇええ!!」
暫く廊下では諦めない私と必死に抵抗する玄弥との攻防が繰り広げられていて、その場を通りたい人も回り道をする羽目になったと言う。