第31章 忍び寄る終焉※
──自分の命よりも大事だと断言していた君
最近、宇髄さんはいつか私のために命を落とすのではないかと言うことがとても気がかりだった。
しかし、第三者からそう聞かされてしまうと怖くてたまらなくなった。
やはり宇髄さんは私のことをそこまで大切だと思ってくれているのだ。
そう考えると…やはり付き纏うのは恐怖だ。
彼を失う恐怖。
そんなこと絶対嫌だと言うのに考えざるを得ないのは日に日に彼の愛が強くなって行くのが私も自覚していたから。そしてそれを第三者に言われることで確信に変わってしまう。
失いたくない
失いたくない
死なないで
お願い、死なないで
そんなことを頭の中で反芻しても結局のところ何かが得られるわけではない。この場では彼の無事を案じ、信じて待つことしかできない。
なるべく彼の戦いの場に私がいないことが求められるだろう。任務に連れて行ってくれないことを不満に思っていたが、こうやって言われてしまえばそんな欲は消え失せてしまう。
「どうかしたか?すまない、言葉が過ぎたか?」
黙り込んでしまった私に煉獄さんが心配そうに顔を覗き込んでくれたので慌てて首を振った。
彼を心配させてどうするのだ。
これは私の問題。誰かを巻き込むことではない。
「いえ!すみません!考え事をしてしまいました。そうですね!私は帰ってきた宇髄さんを精一杯癒したいと思います。」
「うむ。そうだな、それがいい。宇髄も喜ぶだろう。君の笑顔が何より好きだと言っていた。悲しい顔より笑ってやるといい。きっとどんなものより百人力だと思う。」
私の知らないところで宇髄さんが私のことをこんなに話してくれていたことは嬉しい。
幸せだと思う。
だから私は煉獄さんの言う責務を果たそう。それが今の私にできることだ。
「そんなこと言ってたんですね?知りませんでした!では帰ってきたら笑顔で出迎えたいと思います!大体夜明け頃で寝惚けた顔を見せてしまっているので…」
「なに、それもまた一興だろう。では、任務に行く故、これにて失礼する。戻ったらまた甘味を持って礼に来よう。」
「ありがとうございます。…ご武運を。」
漸く離れた手はまだ温かくて彼の熱い心が残っているよう。
今度来た時はもっとおもてなしをしようと思っていた。
それなのに
彼と会うのはその日が最期だなんて誰が思うだろうか。
