第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花!自分を過小評価するのは良くないぞ。」
あまりに申し訳なくて下を向いていると煉獄さんがそう声をかけてくれた。はっきりとした快活な声は宇髄さんとは違う自信に満ち溢れた声で心地が良い。
「君の薬は今や鬼殺隊になくてはならないもの。任務に先立ち、是非欲しかったが処方されるのは怪我をした者のみ。となれば直接出向いて君に頼もうと思った次第だ。皆が口を揃えてよく効くという薬を是非俺も使って見たくてな。」
「…煉獄さん…ありがとう、ございます。」
「君はもっと自信を持て。自信がなくては人を助けることはできない。自信は自分を奮い立たせる最高の武器だ。」
怒るわけでもない。
叱るわけでもない。
煉獄さんが言ってくれる言葉の一つ一つが胸に突き刺さる。宇髄さんだって同じようなことをいつも言ってくれていたけど、身近な人が言ってくれる言葉はどうしても偏りがちになる。
信じていないわけではない。
だけど、第三者に言われると少し擽ったい。そんな感覚。
そして次いで胸がとても温かくなる。
「…自信…。」
「そうだ!君の薬は凄いと皆言っている。驕りは良くないが、君はもう少し自信を持たなければ駄目だ。そうしなければほの花が不憫でならん。」
「え?あ、あはは…!不憫なのは私自身ですか?」
「そうだ!評価をそのまま受け取ればいいんだ。それが君の一番すべきことだ。評価を受け入れることもまた成長に繋がるのだ。」
あまりに真剣に言ってくれているけど、私が可哀想だから私に自信を持てと言っている煉獄さんの表現が面白くて頬が緩んだ。
自信か…それは先日瑠璃さんにも言われた言葉。
他の人から見ると私はそんなに自信なさげに見えるのだろうか。
宇髄さんの継子として…もっと、もっと…と思ってきたけど、一度でも満足したことがあったかと聞かれたら…否。
考えたこともなかった煉獄さんの表現に初めて私は今までの自分を省みることができたかもしれない。
前しか見ていなかったけど、立ち止まって今までしてきたことを認めてあげることも大切なことなのかもしれない。
「そう、かもしれませんね。ありがとうございます。」
そう言うと、薬を取りに行くために立ち上がると煉獄さんに一声かけて部屋を出る。そしてこぼれ落ちた「自信…か。」と言う私の独り言は廊下に吸い込まれていった。
