第31章 忍び寄る終焉※
──何で我慢するの?
軽くそんなことを言ってくるほの花だけど、我慢するに決まってるだろ?!
自分の女が怪我してんだぞ?
しかも、迂闊に抱いちまったらほの花の色気に当てられて激しく抱いちまうこと間違いなし!のこの俺様に簡単にそんなこと聞いてくんなよな?!
男心本当に分かってねぇな、コイツは。
まぁ俺しか知らねェんだから仕方ねぇけども。
「…万が一悪化させたら胡蝶にドヤされんだろうが。怪我の予後を見せに行くんだろ?お前に何かあったら俺は毒を盛られてお陀仏だ。」
「ええー?!やだなぁ、大袈裟だよ〜!」
大袈裟じゃねぇ。
アイツのあの目は本気の目だ。
甘露寺ならば出し抜けるかもしれんが、胡蝶は無理だ。核心をついてきやがるから俺も太刀打ちできやしねぇ。
「…とにかく治るまでは手を出せねぇの。俺、無理させちまうかもしれねぇしよ。悪ぃけど結構落ち込んでんのよ。貧血だったの気づけなくてよ。」
そう、それに尽きる。
一日経った今、思い出して見てもやはりそんな素振りはなかった気がしてならないのだ。
ほの花のことはなんでも分かってるだなんて思っていたこと自体烏滸がましかったのかもしれない。
俺は一体ほの花の何を見ていたのだろうか。
本気でほの花が分からなくなっていた。
もちろん愛しているし、好きだと言う気持ちに迷いはない。
だけど…ほの花との間に少しずつズレが出来ているような気がしてならない。いま修正しねェと取り返しのつかないことになる気がしてこちらは気が気でない。
それなのにほの花はどこ吹く風だ。
全く気に留めていない様子でいつもと変わらない。それが返って怖かったりするのだ。
「ごめんね…?今度から少しのことでもちゃんと言うよ。そんな落ち込まないで…?」
「…言うとか言わねぇとかじゃねぇんだわ。気づくか気づかないかの問題なわけ。お前は悪くねェから気にすんなよ。」
「うー…で、でも…」
「とりあえず暫くお前の体をじっくり観察させてもらうからな。何かあってからじゃ遅ぇんだから。悪い病気だといけねぇだろ?」
万が一病気の予兆ならば、俺もちゃんと感じ取ってやりたいし、そう言う存在でありたい。
この雲をつかむような不確かな感覚は気持ち悪くて仕方ない。