第31章 忍び寄る終焉※
ちゃんと認めて褒めてやれば嬉しそうな顔をして目尻を下げるほの花
そんな顔を見ればやはり胡蝶の言っていてことは正しいと思わされる。
ほの花を恋人としてしか見られなくなってから随分と経つ。いつの間にか継子なんて言うのはただのお飾りだ。
もちろんほの花は十分すぎるほどの働きをしてくれている。音柱の継子として流石だと言われるだけのことをしてくれるが、正直のところ頑張ってくれているほの花に言えやしないが、そんな賞賛の言葉は大して嬉しくない。
音柱の継子としていくら戦果をあげても、恋人の俺からしたら心配なだけだ。
ほの花が戦果を上げれば上げるほど
ほの花を褒められれば褒められるほど
俺の胸中は複雑だった。
思えば説得して早いところ鬼殺隊を辞めさせて俺の嫁にしておけば良かったかもしれないなんてタラレバの話も思い浮かぶ。
「…もし、少しでも体調悪いと思えばすぐに言えよ。貧血あったなんて知らなかったぜ。」
「あ…ご、ごめんなさい…!本当に大したことなくて…!だから急に悪化して私も驚いちゃって…。ごめんね?」
申し訳なさそうに謝るほの花だけど、俄にはまだ信じられない。
自慢ではないが、ほの花の体調なんて手に取るように分かると自負しているのに気づけなかったなんて屈辱極まりない。
貧血の症状が出てからの苦肉の策の方がまだ納得できている。俺が納得できてないのは貧血があったということ。
もしそうなのであれば、気にせず抱いてしまっていた自分を責めるしかない。
「…分かってると思うけど…お前、明日からまた暫く休めな?」
「…ん…?え…?あ、お家で薬の…」
「"休む"と言う意味が分からないようだから今日一日俺の説法を受けるか?」
「えへへ!休み大好きっ!!!お家でゴロゴローー!!得意分野!!」
わざとらしく笑うほの花だが、俺の顔色を窺うと言うことは何もしたらいけないと言うことだけは分かっているのだろう。
腑に落ちないところもあるが、それでもほの花のことを信じる他にない。
医学の知識もないし、貧血だったと言うのが嘘だと言う証拠があるわけでもないのだから。
胡蝶も納得していたようだから俺が疑うこと自体がおかしなことなのだ。