第31章 忍び寄る終焉※
宇髄さんが目の前でしゃがみ、目線を合わせてくれるので恐る恐るそちらを見れば呆れた表情の中にもいつもの優しさが散見した。
それを見た途端、ホッとして胸を撫で下ろす。
叱られると思っていたし、叱られても仕方ないことをしたのに、しのぶさんの助け舟の一声のおかげでどうやら険悪な状況だけは免れそうだ。
「…ほの花。」
目を合わせたまま宇髄さんの低い声が脳に響く。彼の声は麻薬のように私を狂わせる。
「う…は、はい。ごめんなさい。」
「…まぁ、無事で良かったけどよ。お前は俺を心配させる天才なのか、ンなモンに才能発揮してんじゃねぇよ。」
病室には私たち以外誰もいない。
怒っている筈なのにその声色までは怒っていなくて穏やかな其れに申し訳なさが募る。
「…ご、ごめん、なさい。心配かけたのはわかってるけど…本当に苦肉の策…で!最初からそうするつもりだったわけじゃないの…。」
「わぁーってるって。最初からそんなつもりだったなんて言ったら俺はお前を破門にして鬼殺隊も辞めさせる。そんですぐに嫁にするからな。」
「へ…え、あ….いや…、よ、嫁は…嬉しい、けど…。」
宇髄さん的には罰を与えているつもりかもしれないが、結局は彼に守られる選択肢しかないのはもう私の命を守るためだ。
いつだって宇髄さんは私のためを想って考えてくれているのだから。
「…だけど…、胡蝶の言い分も分からないわけではねェからよ…。さっきは怒鳴って悪かった。」
「え…!!いや、宇髄さんは悪くない…!私こそ勝手なことして心配させて…」
「だとしても…"師匠として"はまずかった。さっきの怒りは"恋人として"の俺だった。お前が傷つくのを見たくなかったんだ。だけど…師匠としてはお前の活躍をまず褒めてやるべきだったな」
そう言って頭を撫でてくれる宇髄さんに涙が溢れてきた。
こんなに優しくしてくれる人に…
私は嘘をついてる。
鬼殺隊のためだと言うのは大前提だけど
彼のため…と考えたらどうだろうか
喜んでくれる?
こんなに優しくて温かい彼に私はちゃんと愛を返せているのだろうか
優しくされたら涙が出る。
決して安堵の涙ではない
こんな私を好きになってくれた宇髄さんに申し訳なさを感じている
これは過去への後悔の涙だ