第31章 忍び寄る終焉※
ほの花さんの説明には納得できることもあるが、できないこともあった。
貧血があった…というのは恐らく嘘だ。
宇髄さんは気付いていないかもしれないが、昨日会った時にほの花さんの顔色は良かったし、貧血症状なんて感じられなかった。
でも、ほの花さんは貧血があったと言う。
それは貧血があったことにしないとまずいと言うことだ。
その理由の一つは恐らく彼女のあの治癒能力ではないか。使うなと再三言われている宇髄さんの前では使ったことなど言えやしない。
昨日の夜、運ばれてきた人の中に一人だけ凄い重傷の人がいた。
万が一、使ったとすればその人だろう。
そこで使ったのならば貧血のような症状が出てもおかしくはない。増血剤を飲んだのは切り付けた時の出血に対応するためかもしれない。
そう考えればほの花さんの一連の流れは理解できる。
「…昨夜、三人の怪我人が出て、そのうちの一人はかなりの重傷でした。医療班がほの花さんでなければ助からなかったでしょう。…宇髄さん。」
「…あんだよ。」
「今日のところは私に免じてほの花さんを許してあげて下さい。鬼殺隊士として素晴らしい働きをされました。やり方は苦肉の策でしたが、ほの花さん自身も命に別状はありません。」
「……だからって…!!」
宇髄さんが怒るのも分からないわけではない。
自分の恋人が無茶をして怪我をしたのであれば心配して当然だ。
しかも、怪我をしたのが貧血の症状を緩和させるために自分で切り付けたなんて。
怒り心頭なのも分かる気もするが、彼女のおかげで助かった命があるのもまた事実だ。
「宇髄さん。ほの花さんは任務を完遂されました。褒めてあげて下さい。あなたの継子として恥ずかしくない行動をしました。素晴らしいことです。師匠のあなたが褒めてあげなくてどうするのです?叱るのはその後です。」
宇髄さんをそう窘めると再びほの花さんに向き合った。顔は強張ったままだが、困ったように笑うほの花さんは変わらず綺麗だった。