第31章 忍び寄る終焉※
珠世さんのことだけは絶対に言ってはいけない。
だけど木が足に突き刺さったなんていう嘘はしのぶさんに診てもらえばわかってしまうことだった。
咄嗟についた嘘とは言え稚拙だった。
しかし、自分でやったことの尻拭いは自分でしなければならない。
珠世さんとのことは裏を返せば鬼殺隊の為にもなるのだと信じている。
今は言えないが、私は間違ったことはしていないと断言できる…と思う。
まずは柱二人に見下ろされて尋問されているこの状況を切り抜けなければ活路は見出せない。
「そうですか。貧血もあったようですがそれと関係がありますか?」
「あー…はい。最近、貧血気味だったんですが、症状はそこまで無くて…宇髄さんにも言っていませんでした。でも、昨日任務に行って急に目がチカチカしてふらついてしまったので、増血剤を飲みました。」
「…増血剤はゆっくりと血を増やすものなので直ぐには効きませんよ。」
そう。しのぶさんの言う通りだ。
増血剤は戦いが終わった後の布石として飲んだだけ。そのおかげで今はすっかり良さそうだった。
あの時は効かないと分かってはいたこと。
「そうなんですよね。でも、怪我人の手当てをするのにそんな状態だと返って危ないので自分で切り付けました。痛みで気を紛らわせることによって貧血の症状は和らぎましたし、一日経って増血剤が効いて貧血は何ともありません。足は痛いですけど…大して切り付けていないのですぐに治ります…」
「ふっざけんなぁーーーー!!!!!はぁ?!自分で切っただぁ?!テメェ…!ンなことして万が一出血多量で…!!」
「落ち着いてください。宇髄さん。ほの花さんは薬師です。ちゃんとその辺はわかっているでしょう。そうでしょう?ほの花さん。」
宇髄さんが私に怒声を浴びせてくるのは分かっていたことだ。
このことは言えてなかったけど、怪我をしたことは不死川さんとも怒られるだろうなと話しながら帰ってきたのだ。
庇ってくれたしのぶさんの質問にコクンと頷くが怒りが冷めやらない宇髄さんは拳を握りしめたままだ。
もっと深く切っていたらその場で縫合していたと思うが、この怪我の対処だけは自分で何とかするつもりだった。不死川さんに見つかったのが運の尽きだ。