第31章 忍び寄る終焉※
いきなり激しい口づけに呼吸さえままならない私を助けてくれたのはやはりしのぶさん。
──ボスッ
「あ、ぃでッ!!」
鈍い音が聞こえたかと思うと宇髄さんの痛みを訴える声がして、漸く開け放たれた目と視線が絡み合った。
しかし、私に止められたと思っているようで、不満げな顔をすると再び覆いかぶさってきた宇髄さんに小刻みに首を振った。
「…あんだよぉ…朝の口づけくらい良いだろ?それとも…続きしてほしいのか?ほの花ちゃん?」
「…う、宇髄さん…!」
「はぁ?お前な、やめろよな。その呼び方二人だろ?」
二人じゃないので呼べませんし、絶対寝ぼけてる。そうじゃなければ気づかないはずがない。いや、しのぶさんの気配の消し方も上手いけど。
必死に目で訴えかけてみたけど、暖簾に腕押し状態で、ニヤニヤとしたまま再び口づけをされそうになったので、その口を思いっきり手で塞いでやった。
「…そこまでです。宇髄さん?盛らないでって言ったはずなんですけどねぇ?可笑しいですねぇ?」
「こ、こひょう(胡蝶)…!?」
しのぶさんの姿を確認すると漸く今の状況を悟ったようで肩を落とす宇髄さん。
そして私の手をゆっくり外させると眉を下げた。
「…あー…、悪ぃ。寝ぼけてたわ。此処、蝶屋敷か。ごめんごめん。」
「貴方がどこで盛ろうと関係ないですが、蝶屋敷は別です。流石にあなたたちのまぐわいの場所を提供するわけには参りません。」
「わぁーった。わぁーった。ごめんって。」
「盛らないでと言ったはずでしたけどねぇ…?様子を見にきたら同じベッドで仲睦まじく寝ていらっしゃるので宇髄さんは耳が聴こえなかったのだと思って待っておりました。」
しのぶさんの言葉の節々からニコニコしながらも"怒っています"という匂いがぷんぷんする。炭治郎ではないのになんとなく分かる。
顔を引き攣らせながらゆっくりと起き上がるとベッドから降りて呑気に体を伸ばしている宇髄さん。
「はぁ〜?聴こえてたわ。でもよ、ほの花目の前にしたらいつもみたいに寝てェじゃん?此処で襲おうだなんて思っちゃいねぇよ。」
いや、説得力ありません!宇髄さん!
今の今まであなた私を押し倒してましたから!!
今日ばかりは、しのぶさんの心の声が手に取るようにわかってしまい、深いため息を吐いた。