第31章 忍び寄る終焉※
「コホンッ…!!」
「…ん……?」
誰かの声が聴こえたけど、体はいつものように宇髄さんに抱きしめられている感覚。
空耳か…と思い、宇髄さんの胸に顔を埋め直すともう一度「コホンッ…!」と咳払いが聴こえてきた。
しかも、どう考えても抱きしめられているこの人からではない。
そしておかしなことに今の声の高さから言って間違いなく女性だった。
顔を顰めながらもゆっくりと瞼を開けると視界に入ってきた人物に目を見開いた。
「ひゃ…っ、し、のぶ、さん…?!」
「あら…?ほの花さんは起こすつもりはなかったんですよ?ごめんなさいね?私はそこにいる猿柱、いえ、変態柱の宇髄さんを起こそうかと…。」
その瞳は全く笑ってなくて私は震えながら顔を引き攣らせる。
そうだ…!そもそも何故こんな状況に?
此処は宇髄さんの屋敷ではない。
見たところ蝶屋敷だ。そうでなければしのぶさんはいない。
確か私は怪我をして不死川さんに此処に運ばれて、応急処置をしている間に鎮静剤を飲ませてもらったことでうっかり寝てしまったのだ。
だから私が此処で寝てるのは何となく理解できる。
しかし、横にいる人は…?!もちろん私を心配してきてくれたのは分かるが、宇髄さん越しに見えるのはもう一台のベッド。
何故此処に寝る?!
もう一台ベッドがあるのに!
体の大きな宇髄さんは小さくなって寝るしかないのに此処まで眠れるなんて逆に凄い。
いや、感心している場合ではない。
目の前にいるしのぶさんは爆発寸前だ。私は抱きしめられたまま宇髄さんの体を揺すってみる。
「…う、宇髄さん…!起きて…!起きてくださいッ…!」
「んー…?」
すぐに身じろいでくれるが私の体をぎゅーっと抱きしめるだけで起きる気配はない。
「ちょ、っ…宇髄さんー!起きてくださいよぉ〜!」
「…んー…?あんだよ…。朝から積極的だな…?仕方ねぇな。」
そう言えば目を閉じたままなのに器用に私の顔を引き寄せると、何と口付けられたのだ。
あまりに突然のことだし、しのぶさんがいると言うのに何てことをしてしまったのだ。
だけど、宇髄さんの力に敵うはずがなくて、私は「んん…」と言うくぐもった声を出すだけでそれを受け入れる他なかった。