第31章 忍び寄る終焉※
「此処です」と言われて案内された病室は個室だが、使われてないベッドがもう一台置いてあった。
中に入ると窓際でスヤスヤと眠っているほの花が明るくなってきた外の光に照らされていた。
確かにその顔は少し青白くて貧血だと言われても納得ができる。
「宇髄さん、ほの花さんの目が覚めたら一旦教えてください。私も理由を聞きたいので。」
「…ああ。分かった。」
「朝食はこちらでほの花さんと召し上がって下さい。準備するように伝えておきますので。」
「分かった。悪ぃな。」
昨日から胡蝶の家に飯食いに来てるみたいだな。
流石に礼をしないと男が廃る。早いうちに家に招待するか。
胡蝶が出て行くのを見送ると俺はほの花のベッドに潜り込みいつものように腕枕をした。
何かするわけじゃねぇ。
ただ添い寝するだけ。
ただ見ているだけなんて性に合わないし、こちらも任務帰り。仮眠をとるのにわざわざ隣のベッドを使うなんて勿体無いし、いつもと同じ方がこちらも疲れが取れるってモンだ。
自分の腕の中にほの花の体温を感じると大して疲れてないと思っていても瞼が重くなってくる。少し顔を傾ければ髪からいつもの花の香りがして鼻腔いっぱいに吸い込むとそのまま目を閉じた。
聞きたいことは山ほどあった。
知らなかっただけで、俺はほの花に無理をさせていたのだろうか。
貧血に気づけなかっただけなのかもしれない。
そもそも貧血ってどんな症状だよ。
そんなことすら分からないのに俺がそんなことに気付けるわけがない。
手に感じるのはほの花の細い肩。
この小さな体にどれだけのモンを背負い込んでいるのか俺には想像もできない。
しかし、この腕の中にさえいれば俺が守ってやる。
よく考えたらほの花が怪我をして帰ってきたのって初めてではないか。
擦り傷程度であればよくあるが、最初の任務も月のモノで倒れはしたが怪我はしていなかった筈。
どこのどいつに刺されたのか。
ほの花の口から聞かなければ納得はできない。
だけど、聞いてしまったら俺はそいつを八つ裂きにしたくなってしまうかもしれない。
危ない考えが頭に浮かぶ中、俺の意識は微睡へと誘われた。