第31章 忍び寄る終焉※
「音柱ァアアアッ!ほの花負傷ーーッ!蝶屋敷ニ急ゲェエエエエ!!」
「なっ、…!?はぁ?!お、おい…大丈夫なのか?!」
「急ゲェェエエ!」
自分の任務を終えて、屋敷に戻る最中に胡蝶の鎹鴉が飛んできたことで俺の進路は変更を余儀なくされる。
帰ってきたほの花と一緒に布団の中で微睡を堪能しようと思っていたのはつい先ほどまでの夢と終わった。
不死川がいて、怪我したってどういうことだ!?握りしめる拳と共に一瞬、不死川への怒りが込み上げたが、まだアイツのせいだと決まったわけではない。
それに医療班として行ってるのに何故怪我をするのだ。意味が分からない。
怪我をする理由がないではないか。もちろん任務に同行する以上、医療班とて危険がないわけではない。
しかし、それは殆ど戦えない医療に特化した医療班の場合だ。
ほの花はいざとなれば戦えるし、そこらの隊士なんかよりもよっぽど強い。
それなのに怪我をしただと…?!
わけがわからない。
負傷したと言うだけで怪我の度合いはわからないが、万が一重傷ならばそう言うだろうし、恐らく怪我の具合は軽度だと信じたい。
屋根の上を飛び移りながら全速力で蝶屋敷に向かえば、屋敷の外に不死川が立って待っていた。
そこで待っていたと言うことは誰かを待っていたということ。
この場合、俺だろう。
仕方なく、屋敷に直接入らずに不死川の前に降り立つと呆れたようなため息を吐かれた。
「何だよ、その顔。ほの花は?無事なんだろうな?!」
「テメェが予想した通りのツラして来たから呆れただけだ。心配しなくてもほの花は無事だ。今、怪我の手当てを受けてる。もう終わるだろ」
予想した通りって… 好きな女が怪我したっつーなら心配に決まってるだろうが。
どんなツラして来たって当たり前のことだ。
「つーか、何で怪我すんだよ!?医療班としてっつーから貸したんだぞ?!」
「ンなこと言われてもなァ?!転んで落ちてた枝が太腿に突き刺さったっつってたけどよ、そこまで責任負えねぇわァ!!自己責任だろうがァア!!」
転んで枝が太腿に突き刺さった?
あまりに予想外の言葉に二の句が告げずに俺たちの間には暫く無言が続いた。
そして、どちらも言葉を発しないまま背後から声をかけて来たのは胡蝶だった。