第31章 忍び寄る終焉※
怪我人の処置の前に転んで怪我したというほの花の証言はさておき、状態は芳しくない。
顔色は青白いし、フラついてるわ、左足太ももの怪我は包帯に覆われているがおまけに血が染みている。
宇髄が見たら発狂するんじゃないかと思うほどの状態だ。
アイツはほの花のことになると途端に融通が利かないのは有名な話で、俺はそれを一番知っていると思う。
前回のは俺の過失があったとは言え、今回は過失はない…と思うが、連れて行った任務で怪我をした事実は変わらない。
要するに怒りの矛先は……
(…絶対ェ、俺だろうなァ…。)
穏便に事を済ませてくれないかという期待さえ抱くのが馬鹿馬鹿しいと思うほどの宇髄のほの花への溺愛ぶりは鬼殺隊で知らない者はいないのではないか。
「とりあえずおぶるから背中乗れェ。」
「え?!いや、あの…!て、手を貸していただけたら!それで大丈夫です…!」
「どっちみち俺はアイツにドヤされるのは間違いねェんだからよォ…。早いところ帰って治療した方がいい。」
「何か…めちゃくちゃ申し訳ない気持ちでいっぱいです…。」
心底申し訳なさそうな顔で頭を下げてくるほの花だが、コイツはまともだ。
どちらかと言えばヤベェのは宇髄で、怪我をして申し訳ないなんて思う必要はねぇ。
しかも、それで任務に穴を開けたって言うならまだしもほの花は自分の職務はしっかり全うしているのだから気に病むことはない。
彼女の前で背中を向けて屈んでやると未だにどうしようか悩んでいるほの花に「早くおぶされ」と促してやると恐る恐る背中に乗ってきた。
「す、すみません…。重いですよ…?」
「重くねぇよ。だけど、不可抗力だからなァ。宇髄にはちゃんとそう言ってくれよォ?」
「もちろんです!!宇髄さんにはちゃんとそう言いますので…!すみませんが、家までよろしくお願いします。」
「家ェ?阿呆か。蝶屋敷に連れて行くに決まってんだろうがァ。怪我してんだろ。」
鬼にヤられたわけではないにしろ怪我してるのには変わりないのだから蝶屋敷に向かうのは当たり前なのに、まさか家に帰ると思っていたなんてなかなかの大馬鹿者だ。
有無を言わさずに蝶屋敷に向かう俺にもう何も言わずにただ後ろで大人しくしているほの花にため息をついた。