第31章 忍び寄る終焉※
作戦が功を奏したと言えたのは間違いない。
運ばれてきた怪我人は胸元を切り裂かれていて出血が酷い。
その場で止血をして縫合をしなければいけないのは明白で、あんなに視界が不安定な状況では危ない。
他のところをうっかり刺してしまったりするなんてことは避けたい事態。
幸いなことに足の痛みによって貧血の症状は一旦は感じなくなっているが、それも時間の問題だ。
自ら切り裂いたことによって出血もしているのだから、貧血の症状が再び出てくるのは目に見えている。
時間との勝負だ。
ドクドクと流れ出てくる患部を手拭いを押し当てながら圧迫止血をするが、心配そうに見つめている隊士の人にそれを手伝ってもらう。
その間に止血剤と縫合の準備をした。
「神楽さん…!出血が止まりません…!」
「しっかり抑えててください。今、止血剤を入れますので、そうしたらもう一度圧迫止血していてください。その間に私はあちらの方の処置をしますので。」
気がつけば他の隊士の人が怪我人を運んできていたが、どうやら三人だけ。
不幸中の幸いだ。三人だけなら一人で何とかなりそうだ。
しかも、今運ばれてきた二人は意識も割とハッキリしていて軽傷の部類にはいるだろう。
ホッとして消毒液をかけると手拭いを押し当ててもらう。
「すぐに出血も止まりますので圧迫止血していて下さい。あちらの方の処置が終わったらすぐに処置しますので。」
立ったり座ったりを繰り返しているが、貧血の症状は足の痛みで気が紛れていている。
ただ傷口が引っ張られて私も縫合した方が良さそうだけど…。
「お待たせしました!どうですか?」
「は、はい!ちょっと止まってきたようです。」
「よかった…。では縫合しますね。」
重傷の怪我人の方のところに戻ると止血が完了していたので縫合をするために、針と糸を取り出した。
すぐに部分麻酔を塗ると縫合をし始める。
せめてこの人の処置が終わるまで目眩が治まっていてほしい。
痛みに気を取られているだけで、治まっているわけではないが、今は自分の痛みと目の前の患者さんのことに集中することで貧血の存在を消すことに専念した。