第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花ッ!!怪我人は?!」
鬼畜生の首を斬ってほの花の元に戻ると二人の怪我人は鎮痛剤が効いているのか横になっていて寝息が聞こえてきた。
そこには最初に逃したあの重傷の隊士もいて、助かったことにひどく安心した。
「風柱様、お帰りなさいませ。この方で最後です。皆さん一命は取り留めていますので、ご安心を」
最後の一人だと言う隊士の包帯を巻きながら、こちらを見上げたほの花は穏やかで優しく微笑んでいるのだが…、顔色が悪いような気がして眉間に皺が寄る。
辺りは月明かりが照らしているだけで大した灯りもないのだからそのせいかもしれない。
隠を呼び寄せると順に蝶屋敷に運ぶように指示をして、最後の一人の手当てが終わると漸く全ての怪我人を見送ることができてホッと一安心した。
ほの花と顔を見合わせて頷き合うが、やはりどうも顔色が悪そうに見える。
「皆さん無事でよかったです。薬箱を片付けちゃいますね。」
「あァ…。つーかよォ、お前…大丈夫かァ?何か顔色悪くねェかァ?」
「そんなことないですよ。風柱様、怪我人の報告で蝶屋敷に行きますよね?これを片付けたら向かうので先に行ってもらっていいですよ。」
ほの花は宇髄に借りた継子だ。
一人にして何かあったらそれこそ宇髄にも顔向けできねェ。ただでさえ前に一悶着あったと言うのにこれ以上、ほの花に何かありゃァ、俺の首が飛ぶ。
薬箱の整理があると言うならばそれを手伝おうと思い、彼女の近くに座ると目に飛び込んできたのは足に乱雑に巻かれた包帯だ。
しかも、真っ赤に染まっているではないか。
「っ、ほの花…!お前…!それ、どうした?!」
「え…?あ、ああ…!すみません。大したことないんです。怪我人がいらっしゃる前にドジって転んでしまってそこにある木の枝が刺さっちゃっただけですよ。」
「は、はぁ?こ、転んだってェ?!」
ほの花が指を差した先にあるのは確かに尖った木の枝だが、何もないところで転ぶとは鈍臭いにも程がある。
体術はかなりのものだし、いくら休みボケしていたとしてもそんなことあるか?
「あはは」と言いながら頭を掻くほの花だが医術の心得がない自分には判断しようがないためそれ以上何も言えなかった。