第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花さん、これが解毒剤です。」
そう言われて飲み干した解毒剤は苦くて不味くて最悪だったけど、そんなこと我慢できると思うほどの不安が頭から離れない。
私はいま、任務中なのだ。貧血症状が出てしまったらと思うと気が気でない。
「5分ほどで効いてくると思います。ありがとうございました。助かりました。ところで…ほの花さんのお話とは…?」
正直、いまそれどころでないのだけど…。
しかし、ゼェゼェとした呼吸のせいで言葉を紡げずにいると間髪入れずに愈史郎くんが「おい、早く言え」と急かしてくるので重い体を起こして珠世さんに向き合った。
「ほの花さん…、また今度でも構いませんよ?」
「いえ…、あの…実は…。」
珠世さんは薬学にかなり精通している。
私なんかよりもっともっとずっと詳しい。
母のことも知っていたし、きっと母の薬の調合のことも詳しいと思った。
私が聞きたかったのはある薬の調合。
どの薬事書を探しても載っていなかった。
でも、きっと珠世さんならば知ってるだろうと思った。
鬼の珠世さんに聞くなんて道理としてどうなのかとも思ったが、炭治郎が「珠世さんは悪い人じゃない」って言っていたのを聞いたらもう迷いは無くなった。
文を預けたところまでは実は少し迷っていたけど、炭治郎にそう言われてからは心の準備はできていた。
解毒剤は5分ほどで効いてくると言っていた通りで話していたのは5分くらいのようで毒は体からすっかり消え失せたかのように体は楽になったが…、やはり立ち上がろうとするとふらつきが止まらなくて座り込んでしまった。
「ほの花さん…!大丈夫ですか?」
「珠世様、そんな奴放っておいてもう行きましょう!柱が帰ってきたら問題です!」
「愈史郎!なんてことを言うの!」
「申し訳ありません!!」
先ほどまでならば、とりあえずツッコミどころ満載だと思えたが、今は愈史郎くんの肩を持とう。
少しでも早く此処を離れてもらわないと困る。
「いいんです。珠世さん。ただの貧血です。行ってください。例の薬の件だけ…よろしくお願いします。」
「ほの花さん……わかりました。では、失礼します。」
これでいい。
先ほど横になってる時遠くの方で戦いの振動が聴こえてきた。私の役目はこれからなのだから。