第31章 忍び寄る終焉※
「茶々丸に預けてくれた文を拝見しました。私もほの花さんに再びお願いがあったので急ぎ参りました。」
「お願い…?ですか?」
「ええ。先にほの花さんのお話を伺いましょうか。」
そう言って少しだけ口元を緩ませて向き合ってくれた珠世さんだがすぐに首を振る。
私のは急ぎと言うわけではないのだ。
珠世さんの急ぎと言うのは鬼舞辻無惨に対抗しうるための私の稀血に関わることだろう。
どう考えてもそちらの方が優先だ。
「いえ。珠世さんのお話を先に伺います。何でしょうか?」
「お前なぁ!珠世様が折角譲ってくださったのに無礼な奴だな!?」
「愈史郎。やめなさい。では…よろしいですか?」
相変わらず愈史郎くんの珠世さんへの忠誠心はすごい。珠世さんが制さないと喧嘩が勃発することだろう。
私は珠世さんと目を合わせて頷くと彼女も納得したように話し始めた。
「恐縮ですが、ここ何回かほの花さんの血を取らせてもらって困ったことがわかりました。」
「困ったこと…、とは?」
「あなたの血が恐らく体調によって変化するようなのです。一番最初の時でも雑魚鬼に対する毒性は十分と言えますが、二回目、三回目…と取らせてもらった時を鑑みるとほの花さんの血はあなたの体調が悪ければ悪いほどその毒性は強まる傾向にあります。」
珠世さんに体調不良と言われて思い出すのは、二回目は確か食べ過ぎで胃腸を患っていた時、三回目は瑠璃さんの毒を喰らった直後だ。
どちらも確かに体調は万全でない。
三回目に関しては最悪だと言っていい。
「しかし、より深く調べるためにはもう一度あなたの体調が悪い時の血を調べたいのです。」
「え…急にそう言われても…私はいま頗る元気です…」
「はい。なので、此れを飲んですぐに血を採らせてください。即効性の毒ですが、解毒剤を直ぐに飲めば大丈夫です。少しの間つらいですがご協力頂けませんか?」
また毒か…。
あんな想いは二度としたくないと思ったのはつい最近のこと。
まぁ、でも今回は解毒剤があるならいいか…と軽い気持ちでそれを了承すると、差し出された錠剤を口に含みごくりと飲み込んだ。