第31章 忍び寄る終焉※
任務の場所に着いた頃まだ辺りは陽が沈んだばかりで明るかった。
夏なのだから当たり前だ。日が長くなっているのだろう。
人手が足りないと言ったのは本当のようでいつもはもう数人居るはずの医療班は私しかいなくて、言い渡された場所に薬箱を下ろすと舞扇を携えて待機をする。
鬼と戦うのは剣士だとしても医療班が全く戦えないでは話にならない。
ただし、今日は医療班としてきてるのだから無理はできない。怪我人が出た時私しか応急処置ができないのだから。
しかしながら、待機している時間というのは随分と暇を持て余す。
気を張っていたくても剣士の時と違い、戦いに身を置くわけではない分、気持ちも緩んでしまう。
結局、この日も鬼は出なかったようで、私たちは蜻蛉返りをする羽目になったのだが、張り込むこと三日目に、漸く鬼の出現情報が鎹鴉によってもたらされた。
「ほの花!其処にいろォ!怪我人が出たらそっちに送る!」
「承知しました。風柱様!」
意気揚々と日輪刀を携えてどんどん奥へと進んでいく不死川さんを見送ると言われた場所に待機して薬箱を広げる。
今日もまた医療班は一人。
剣士のがたくさんいた方がいいのは分かるから構わないのだが、怪我人が多いと自分一人で全員助けられるか不安だ。
もう少し医療班の拡充を願いたいものだが、困ったことに隊士自体が不足して困っているのだから医療班に回せる人数は限られているだろう。
耳を澄ませても戦闘の音はまだ聴こえてこないけど、その代わり「ほの花さん」という聴き覚えのある声に勢いよく振り向いた。
確かに私は会いたいとは言ったが、よりにもよってこんな時に?
不死川さんに見つかったら…!
「すみません。急を要したものですから任務中に失礼致します。」
「た、珠世さん…!今日は一人じゃないんです…!柱の人と一緒で、見つかったら…!」
「お前な、珠世様に口答えすんな。此れを貼れ。姿が見えなくなる。」
「えぇ?!ちょ、…!?」
珠世さんの横にいた愈史郎くんがバチっと頭に貼ってきた紙切れが姿を見えなくするというが俄に信じがたい。
しかし、私も会いたかったのだ。
それならば早いところ済ませなければ不死川さんの強さならば早く終わってしまうかもしれない。