第31章 忍び寄る終焉※
久しぶりの任務ということで「帰ったら絶対抱く」と宣言していた宇髄さんを何とか窘めることには成功したけど、それはもう大層不機嫌な状態で任務に行ったのは先ほどのこと。
「…帰ってきたらブチ犯す…!」
え、ねぇ、それって仮にも婚約者に言うセリフなの?!
強姦だよ?!そうなった時に私も合意してしまうのだろうから強姦ではなくとも…、私の意志は完全にないと思われる。
だって久しぶりの任務なんだよ?!
腰が痛くて救護すらできないんじゃ、何のために行ったのか分からないではないか。
そんなの宇髄さんの継子としても後ろ指差される案件ではないか。
恋人が去っていく後姿を見つめながら、帰ってきた後のことを考えて震えるなんて私くらいのものではないかと項垂れる。
薬箱を整えるとそれを持ち、私も不死川さんとの待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所とはいえ、屋敷と目と鼻の先。
宇髄さんの心配性を考慮して近くに設定してくれたのは間違いない。
不死川さんはああ見えてとても優しいから炭治郎の誤解も解けたらいいな。やり方はまずかったのかもしれないけど、鬼殺隊の柱としては間違ってはいない。
屋敷を出ると直ぐのところに不死川さんが壁に寄りかかって待っていてくれた。
私が来たのが分かったようで手を上げて微笑んでくれている。
「よォ?悪ぃなァ。せっかくの休暇中に。」
「いえ、全然大丈夫です。お役に立てるのならば何よりです。」
「割と近くなんだけどよ、今回は前みたいな不埒な任務じゃないから気を楽にしていてくれ。」
「あはは!大丈夫です。」
不死川さんの話だと近くで鬼の目撃情報があったのだが、なかなか尻尾がつかめず張り込んでいるらしい。
そのために医療班も勿論待機しないといけないのだが、人手が足りずにこの任務にだけ留めておくことができないので私に頼んだとのこと。
「宇髄の野郎は医療班っつーことなら快く応じてくれるからよォ。」
「宇髄さんの継子だから私に直接頼むってわけには行かないんですもんね?それなら仕方ないですねぇ…。」
「お前に直接頼めるんなら最初からしてるわァ!出来ねェからあの野郎に頭を下げてだなァ…!」
余程鬱憤が溜まっていたのか出るわ出るわ不満の嵐。目的地に着くまでほぼ不死川さんの愚痴を聞きながら向かうことになるとは思わなかったが、それはそれで貴重な体験だった。