第31章 忍び寄る終焉※
「ご馳走様でした〜!」
「胡蝶、今度は家にこいよ!美味い飯を鱈腹食わせてやるからよ。継子も連れてこい。」
「はい。是非伺わせて頂きますね。カナヲも喜びます。」
しのぶさんに昼餉のお礼を伝えると私は宇髄さんと一緒に帰途に着く。
門を出てしまえばどちらかともなく手を繋ぎ、笑い合える存在だということは幸せだ。
温かい手が私の手を包み込んでいるとホッと安心できる。
「宇髄さん、眠くない?」
「あのー、もう二人きりなんだけど?」
「あ、ああ…!て、天元…!眠くない…?大丈夫?」
「いや、大丈夫だ。眠くねぇよ。夜を徹することなんてザラだしよ。気にすんな。」
この温もりを手放したくない。
ずっとずっと宇髄さんに抱きしめられていたい。
一緒にこうやって手を繋いでお散歩したい。
無意識に手の力をこめてしまっていて、宇髄さんが繋いで手を引き寄せて腰を抱いてくれた。
「ばぁーか。俺は死んだりしねぇから安心しろ。ド派手に生き残ってやらぁ。」
「…嘘ついたら鋼鐡塚さんのところに嫁に行っちゃうからね。」
「はぁーーーー?!?!ふ、っざけんなぁあっ!?駄目に決まってんだろ?!未亡人になれ…っつーのも、こ、酷だけど…アイツは好かん!」
綺麗な顔を盛大に歪ませて激怒する宇髄さんだったけど、すぐに考え込むように顎に手を添えて唸り出した。
「…??どうしたの?冗談だよ?」
「そんなこと…考えたことなかったけどよ。俺が万が一死んだらお前別の男に嫁ぐことがあるんだな…。」
「えー?そ、そんなこと私だって考えたことないよ…!」
ツラそうな顔をしてこちらをチラッとこちらを見ると深いため息をはいた宇髄さん。
いつもの強気な笑みではなく自信なさげな表情は何だか可愛く見えた。
「…絶対ぇに死なねぇけど…お前が他の男に行くのは死ぬより嫌だな…。」
「行かないよ〜。宇髄さんのところにしかお嫁に行かないって約束する。」
「じゃあ、本当に死ねねぇわ。ほの花を未亡人にするわけにいかねぇからよ。」
「それは…お願いします。ふふ。」
宇髄さんが死なないならこんな嬉しいことはないから。
それなら私は約束するよ。
あなた以外のところに嫁いだりしないって。
死んでほしくないし、私が守るけど、万が一そうなったとしても、宇髄さんより愛せる人なんてもういない。