第31章 忍び寄る終焉※
──いつ死ぬかわかりませんからね
しのぶさんがそう言うには理由があるのだろう。
きっと鬼の動きが活発なのかもしれない。
つい先日も炭治郎達は十二鬼月と対峙していたらしいし、柱は誰もが忙しそうだ。
いつ死ぬか分からないと言うのは私も覚悟してきたことなのに、こうやって柱同士の会話の中で聞かれると''いよいよ来たか"という気になる。
「まぁ、俺はド派手に生き残ってやるけどな。」
「そうですね。みすみす死ぬ気はありません。ですが、たまには息抜きしないと我々も持ちませんからね。」
「そりゃァ、そうだな。帰ったら任務前にほの花を補充しねぇと持ちそうにねぇわ。」
「んなぁっ?!な、何を言ってるんですかぁ!!」
しのぶさんは笑っていたけど、こんなところで猥談を始める宇髄さんに私の顔は熱くなる。
きっと真っ赤に染まっていることだろう。
「ふふ。宇髄さんはブレませんねぇ。ほの花さんと生き残ってくださらないと花嫁姿を見られませんので頼みますよ。」
「へ?!し、しのぶさん…!!」
「あったりめぇだろ!?俺が世界で一番綺麗な花嫁にしてやるから胡蝶も楽しみにしておけよ?」
「う、宇髄さんまで…!」
今度は惚気話みたいになってきて居場所が悪くてたまらない。
おかげでせっかく熱々にカラッと揚がったトンカツは美味しいはずなのにあまり味がしなかった。
「ほの花さんは不死川さんの任務に医療班としていかれるんですよね?先ほど宇髄さんから伺いました。」
「あ、は、はい!行って参ります。」
「本当に助かります。隊士不足が深刻ですが、医学の知識が必要な医療班の代わりはなかなかいなくて困っていたんです。」
確かに医療班は鬼との戦いに駆り出されることはなくとも、傷ついた隊士の命を守る砦でもある。
大切な任務を任せてもらったのだからしっかりと務め上げたい。
それが私のできることだ。
宇髄さんとの任務に行けなくても、彼をガッカリさせることはしたくない。
薬師に専念してほしいという願いは…まだ私の中では受け入れられないけど、好きな人に死んでほしくないという彼の願いだけは理解できるのだから。