第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花です。」と言う声が聞こえてきたかと思うと、襖の向こうに朝あったばかりのほの花の姿に顔が緩んだ。
睡眠中に胡蝶の鎹鴉"艶"が生じを突き破って入ってきたのでほの花に何かあったのかと思い、飛び起きたが話の内容に脱力したのはつい先ほどのこと。
「おっせぇーわ!まさかまたアイツんとこでチンタラしてたんだろ?」
「な、だ、だって…!炭治郎達と積もる話が…!」
「つい最近会ったばかりでよく話すことあんな?」
浮気をしているとは思っていないが、ほの花が他の男と一緒にいるのを見るのは気に入らないのだ。
独占欲の塊と言われても嫌なもんは嫌なのだ。
「宇髄さんこそ、寝てなくていいんですか?」
「胡蝶の鎹鴉に起こされたんだわ!お前に何かあったのかと思いきや"昼餉ヲゴ一緒シマセンカ?"だぜ?脱力した上に、もう眠気も覚めたから来たんだよ。」
「…な、なるほど。」
宇髄さんの前まで歩みを進めると手を引かれてその胸の中に飛び込む形になってしまい、顔が熱くなった。
「ちょ、っ…う、宇髄さん?!」
「まだ胡蝶来てねぇからいいだろ?抱きしめるくらい。」
「ま、また怒られちゃいますよ?」
「足音聞いてっから大丈夫だ。」
蝶屋敷は大好き。
しのぶさんもいるし、カナヲちゃんもアオイちゃんも他の子達も大好きだから。
でも、此処で宇髄さんとの思い出はあまり良くないものはばかりだ。
無礼講だと言ってお酒を飲んで、酔っ払った上に宇髄さんに口づけをかましたり、
先日は宇髄さんが私を押し倒してきてそれをしのぶさんに目撃されたり、
とにかく酷いことしかしていない。
本当ならば此処に来ることすら恥ずかしいくらい。
でも、此処が大好きだから一人で来る分には気兼ねなく来れている。
ただし、こうやって宇髄さんが一緒だと気が引けるというのに彼は全く気にしていない。
気にするどころか宇髄さんの豪快さは止めることを知らない。
腕の中でモゾモゾと藻搔いていても彼の力強さには敵わないのは明白で、私は仕方なく大人しくそこに収まることにした。
しのぶさんが来るまでなら…
それまでと約束してくれるなら
私だって宇髄さんの温もりは大好きなのだから。