第31章 忍び寄る終焉※
ほの花はいつもニコニコしてて、花のように可憐で少しも負の要素を感じさせない女の子。
それなのにそんな過去を持っていたなんて思いもしなかった。
音柱の人と恋仲だと聞いていたから、てっきり幸せいっぱいだと思っていた。音柱の人から感じた匂いは甘くて暖かくて、他の人に向けるそれとは全く違った。
ほの花も同じ匂いがする。
甘くて暖かくて…でも、たまに少しだけ儚い匂い。
今がその儚い匂いが強い。
特に気にもしていなかったけど、ほの花からするこの儚い匂いは何かを諦めているようなそんな匂いにも感じた。
ちゃんとした恋愛をしたこともなかったから、それが宇髄さんとほの花の中で何かあった時の匂いなのかも…と勝手に思っていたけど、その匂いは日に日に強くなっていく気がした。
それは最終選別の時には感じなかった匂いだからきっと宇髄さんと関係してるような気がする。
話してくれた過去のことならばきっと初めて会った時も感じた筈だからだ。
でも、男女の関係に口を挟むことは野暮だということだけは何となく分かる。喧嘩ならば第三者が口を出すことはもっと良くないと思ったけど、ほの花からは甘い匂いもするんだ。
余計によく分からない。
俺にはまだ分からない大人の恋愛には色々あるのかもしれない。
「そうだったんだね…。ほの花もツラかったね。家族どころか村ごとなんて…。」
「うん。最初はごはんも喉を通らなくなっちゃったんだけど…師匠…宇髄さんがそばにいてくれたおかげで今はもう大丈夫!!」
ほら、やっぱり甘い匂いもする。
頬を桃色に染めて宇髄さんっていう人の話をする時は甘くて優しい匂いしかしない。
「そっかぁ…。宇髄さんが居てよかったね。俺も禰󠄀豆子が…鬼になったとしても、生きててよかった」
「そうだね…。大切な人がそばにいてくれると強くなれるものだよね!」
ほの花の言うとおり。
禰󠄀豆子が鬼でもそばにいてくれていたことで俺は逆に救われたんだ。そのためなら頑張ろうと思えるから。
だけど、ほの花からたまにほんのりと香るその儚さの正体はわからないままで、この時もう少し突っ込んで聞けばよかったと後で物凄く後悔する事なった。