第31章 忍び寄る終焉※
「珠世さんとは…たまに、会ったりするの。母の…古い知り合いみたいで。」
言葉を選びながら話すことは疲れる。
伝えてもいいことと伝えるとまずいこと。
どちらも紙一重のように折り合っていて頭の中でこんがらがる。
一度絡まってしまうと知恵の輪のようになかなか取れなくなってしまうことだろう。
「…最終選別の後、宇髄さんと恋仲になってから知り合った。」
最初に出会った時、血を取られてから何度か使いの茶々丸という猫が血を取りに来る。珠世さんはどこかで見ているのかと思うほど、宇髄さんの留守の時に来る。
初めて茶々丸が屋敷近くに来た時、驚いて声が出なかったのを今でも覚えてる。あの日は私は任務に出ていてその帰りだった。
そして宇髄さんは遠方の任務で暫く帰らないというとき。
そういう絶妙な頃合いで茶々丸はやって来る。
音もなく現れるので、黙って血を渡していたが、つい先日私は手紙を預けた。
"一度お会いしたいです"と記したもの。
それはずっと考えていたことを聞きたかった。聞く人が他にいなかった。
でも、どうしても知りたかったことがある。
それは私がこれからも宇髄さんのそばに居続けるために絶対に必要なことだから。
約束したから。
宇髄さんと。
ずっとそばにいるって。
だから私はその約束を違えるつもりはない。
「誰にも言ってなかったのに炭治郎が…ううん。産屋敷様まで知っていたことに私は物凄く驚いた。産屋敷様とその話はしてない、けど。炭治郎には聞きたかったの。どこで知り合ったのかな…って。」
「ほの花…。俺も誰にも言ってなかったから驚いたよ。そっか…ほの花も知ってたんだね。」
「うん。愈史郎くんが凄い忠誠心だよね。ふふ。」
「あははっ!確かに!…何だろう。話す人もいないし、人に言えないことが苦しかったわけではないけど…ほの花と共有できて、凄いホッとしてるよ。」
その気持ちが痛いほどよく分かった。
ただ私は言えないことが苦しくて宇髄さんに泣きついたことがあるけど。
それでも時間と共に少しずつ受け入れていったところだった。
だから目の前にいる大切な友達と秘密を共有できたのは少なからず心の拠り所になって、私もホッとしていた。