第31章 忍び寄る終焉※
「炭治郎〜!」
「え?あ、ほの花!どうしたの?朝から。」
後ろから声を掛ければいつものように穏やかな笑顔で迎えてくれる彼の隣に座ると、私も笑顔を向ける。
「朝にね、任務で怪我をした人たちの応急処置の手伝いで来たの。」
「へぇー!!ほの花は戦える上に薬師としても凄いんだね?!格好いいなぁ。」
「いやいや…、そんなことないよ…!」
炭治郎の言葉はいつも真っ直ぐで裏がない。
本当の気持ちを少しの澱みもなく伝えてくれるから若干照れてしまうけど、それが彼のいいところでもある。
ただいつも私は素直に言葉を受け入れることを恐れてしまう。
「ありがとう」と素直に言えばいいところを考えちゃうんだ。自分の限界を認めることが嫌で。
きっとその根底にあるのは私の陰陽師としての能力値にある。
元々、陰陽師は男性のが力が強いとされてきたから私の能力は兄たちより遥かに劣る。そんな彼らが負けたという鬼に私が敵うはずが無いのだ。
呼吸も使えない、陰陽師としての能力もない。
宇髄さんがいくら鍛錬してくれたとしても能力の限界は見えている。それを認めたくないし、もっと強くなりたいと思えば思うほど、炭治郎達が羨ましくなってしまう。
私は…とても中途半端なんだ。
女として生まれたことが鬼舞辻無惨を倒すための切り札になると珠世さんは言っていたけど…、それは私の生まれ持った能力の話。
恥ずかしながらどれほどの威力があるのか見当もつかない。
全部全部…私は中途半端。
鬼殺隊の剣士としても
薬師としても
だけどどれも選べなくて結局は現状に甘んじて、宇髄さんに守られている。
情けなくて涙が出そうだ。
「何か…あったの?」
隣にいた炭治郎が顔を覗き込んできたことでハッとしたが、どうやら深く考え込んでしまっていたらしい。
私は慌てて顔を上げるとフルフルと首を振った。
「そう?ほの花から悲しい匂いがした。遠慮せずに何でも言ってよ?俺たち友達じゃないか!」
そう言って笑う炭治郎が物凄く眩しい。
こんなウジウジしている暇があれば鍛錬をした方がいいかもしれない。
きっと彼はここで人知れず鍛錬をしていたのだろうから。