第6章 君思ふ、それは必然
「おーい、俺の大事な女に軽々しく触んじゃねぇよ。」
「え、え、あ…。」
清貴さんが見上げないといけないほどの大きさの彼を見ると腰が抜けたように座り込み、掴まれていた腕を潔く離してくれた。
解放された腕は赤くなっていたけど、そんな痛みよりいま支えてくれている逞しい腕に掴まることで溜まった涙を見えないように隠した。
「…ほの花、お遣いは済んだか。」
その言葉にコクコクと頷くことで肯定をすると宇髄さんはそのまま私を抱き上げる。顔が見えないように広い肩口に隠せるようにしてくれた。
「よし、じゃあ帰るか。お前らも行くぞ。」
「「「はい!」」」
正宗たちの声が聴こえると歩き出したのが分かった。やっとここから解放されると思うと全身から力が抜けていく。
何故、ここに彼が来てくれたのかはわからない。
それでもいてくれる。
その事実が涙が出るほど嬉しかった。
しかし、せっかくこの場から離れられると思ったのに再び立ち止まるとくるりと向きを変えた宇髄さん。
途端に身を竦ませるが、初めて会った時もしてくれたように背中をトントンと優しく撫でられる。それはまるで「大丈夫だ」と言ってくれているようで落ち着きを取り戻していく。
「……勘違いしているようだから教えてやるよ。ほの花がデカいんじゃねぇよ。お前が小せぇんだ、バーカ。こんな良い女を逃したテメェは縦寸も懐もとてつもなく小せぇ男だっつーことだ。そんな男にゃほの花はもったいねぇんだよ。クソ野郎。」
ねぇ、何でそんなこと言ってくれるんですか。
私を喜ばせてどうするつもりですか。
これ以上好きにさせないでください。
大好きで大好きでたまらないんです。
私は肩口に自ら抱きつくと溢れ出る涙を彼の隊服に付けてやった。世話の焼ける継子だと思ってくれていい。
それでもいいから私の存在を焼き付けるかのように顔を押し付ける。
再び進み出した歩みの先に私がいたらいいのに。
そんな馬鹿なことを考えながら、馬鹿な私はそのまま眠りこけてしまったのだった。