第31章 忍び寄る終焉※
「俺は!!お前と!!同じ部屋がいいんだわ!勝手に部屋に帰るならあの部屋は物置にする!!!」
「……え、わ、私の部屋は…?」
「いるか?!いらねぇだろ?俺の部屋でいいだろ!薬の調合すんのにいるならそっちの部屋は薬の調合"だけ"する部屋にしろ。」
何と横暴な…。
頑なに譲らないと断固たる意志を感じる宇髄さんにお手上げだ。
せっかく朝からせっせと棚や箪笥を移動させたと言うのに…。
でも、宇髄さんの部屋が狭くなってしまったのを私なりに気にしていたのだから、私の中ではこれは正解だ。
「じゃあ、寝るのは天元の部屋にする。それならいい?」
「俺がいる日中も俺の部屋で過ごすんならな。薬の調合があるなら仕方ねぇけどよ。基本的にお前の部屋は俺の部屋って決まったんだ!勝手に変えんな!」
いや、そこまでは決まってなかったと思うんですけど…。
だが、そんなこと言おうものなら逆鱗に触れてせっかく運んだ大型家具も全て元に戻されそうだ。
「わ、わかった。わかったよぉ…。じゃあもうしばらくお世話になるね?」
「もうしばらく…?」
「あ…こ、これからずっとお世話になります!!」
「そうだ、それでいい。お前の部屋は俺の部屋だ!分かったな?」
コクコクと壊れた人形のように首を振ればやっと満足そうにニコニコと笑い、頭をポンとたたいて湯浴みに行ってしまった。
まさか部屋を元に戻しただけであんなに嫌がられるとは思いもしなかったけど、瑠璃さんが遊びに来た時にあの部屋で寝られるようにしておくのもいいかもしれない。
家具は戻してしまったけど十分に寛げる空間は残っているし、これはこれでアリかもしれない。
久しぶりに薬台の上に薬を広げてみると座布団の上に薄紅色の膝掛けを置く。
それは昨日瑠璃さんが最後にくれた手作りの膝掛け。
一から作るのは大変だったろうにそれはとても丁寧に作られていてお店で売っている物と大差はない。
もちろん宇髄さんに買ってもらった物を切り裂かれたのは悲しかったけど、瑠璃さんがちゃんと覚えていてくれて此れを人知れず縫ってくれていたなんて凄く嬉しかった。
それを端に寄せて久しぶりに薬の調合でもしようとした時、勢いよく入ってきた音花にビクッと肩を震わせた。
やっと慌ただしい日常がまた戻ってきた。
これが私の日常だ。