第31章 忍び寄る終焉※
翌朝、いつもより帰ってくるのが遅くなってしまい、屋敷に着いたのは午前9時前。
怪我人を蝶屋敷に運ぶのを手伝ったのだが、思ったよりも数が多くて時間がかかってしまった。
蝶屋敷はてんてこ舞いになっていたので、ひょっとしたら後からほの花は呼ばれちまうかもしれねぇな…とため息を吐きながら部屋の中に入ると昨日までと景色がまるで違って目を見開いた。
部屋を間違えたか?と思い、一度外に出てみたが間違いはなさそうだ。
「…は?どーゆーことよ、これは。」
昨日まで部屋にあった棚やら薬台やらが無くなっていて、ほの花の服やらも押入から何枚か外に出ていたが、俺のために布団は整えてくれてある。
何事かと思って廊下に出ようとすると、ちょうどほの花が入ってきた。
「わっ!…あ、天元!おかえりなさい〜!遅かったね?お疲れ様でした!湯浴みしたらご飯食べる?」
「それより聞きてぇことがあるが、部屋の模様替えでもしてんの?」
「模様替え…?天元の部屋?え、してないよ?何で?」
素っ頓狂な顔をしてそう答えるほの花だが、明らかにそれはおかしい。
棚やら薬台なんて大きなものを移動させる必要があるのは引越しか模様替えくらいのものだ。
「ンなわけあるか!デカい家具がなくなってたぞ?!」
「へ…?ああ!そりゃぁそうだよ!自分の部屋に戻したから!」
「………は?」
自分の部屋に戻した?
自分の部屋?
自分の部屋と言うのは瑠璃が使ってた部屋だ。
確かにそこはほの花が元々使っていた部屋だから元に戻すのは当然のことかもしれないが…。
ということは…物凄く嫌な予感がしてきたぜ。
「今日中には元の位置に戻せると思うから。今までお世話になりました〜!」
ほらな。やっぱり!
俺は瑠璃が来て唯一良かったと思えるのはほの花が俺の部屋で過ごすようになったことだと言うのに。
コイツは瑠璃がいなくなった途端に当たり前のように家具を元に戻し始めるなんてふざけてるとしか思えない。
「っ、ちょ、ちょっと待て!?何でだよ?俺の部屋に居ればいいだろ?!何で元に戻す必要があるんだよ?!」
慌てて止めてもほの花の顔はキョトンとしたままで「だって…部屋空いたから…」と物理的なことを引き合いに出してくるので頭を抱えた。