第31章 忍び寄る終焉※
まぁ、案の定といえば案の定でほの花は特に気にすることもなく、その依頼を受け入れるととんとん拍子に来週からの任務復帰の運びとなった。
あとで余分に休みを取るということにはなっているが、どうせほの花のことだからそんなことは忘れて仕事に勤しむに決まってるのだ。
アイツは良くも悪くも糞真面目なのだから。
そして今日は──
「ふぇ、っ…瑠璃さん…!お、お元気で…っ…!ひっく…!」
「だから今生の別じゃないんだから…いい加減泣き止みなさいよ…。」
──瑠璃の旅立ちの日
昨日はほの花の発案で瑠璃の送別会をしたのだが、別にコイツがいいなら構わねぇけどよ?殺されそうになったくせによく仲良くなれるな。仲直りしてからのコイツらの仲の良さは本当に異常なほどだし、瑠璃は気のいい奴だが好き嫌いがはっきりと分かれる。
多分、まきをと須磨は未だにあまりよく思っていない気もする。雛鶴は遠縁だし、無碍にできないのだろうが。
そんな中、まさか殺されそうになっていた当事者のほの花が瑠璃とここまで仲良くなるなんて誰が思うか。
あの三人よりもベッタリで「お姉ちゃんみたい」と言って慕っていた。きっと出会い方が違ったならば、ほの花と瑠璃は親友になっていたことだろう。性格は全然違うのに絶妙な関係性の良さには舌を巻いた。
隣で瑠璃を目の前にして涙が止まらない様子で嗚咽を出しながら泣き噦るほの花の頭をポンと撫でてやる。
「ほの花、これ。あなたにあげる。」
「…ひっ、く…なんですか…?」
そう言って差し出してきた包みは平べったくてほの花が受け取るとふにゃりと形を変える。
「膝掛け。仕事、明日からなんでしょ?今の時期膝掛けなんてなかなか売ってないから一から編んだの。同じものは買えなかったけど、これで許して。」
「っ、ふぇ、ありが、ありがとう、ございま、す…!た、たいせつに、しまっ、す…!」
涙でぐしょぐしょの顔を隠すこともせずに大切にそれを抱きしめると瑠璃は俺の方をチラッと見た。
「頼んだわよ」と言う無言の視線な気がして、頷けば、にこりと微笑み一歩後ろに下がった。
「じゃあ、行くわ。みんな元気で。」
瑠璃はそう言うと手を振ってその場を後にする。
ほの花がずっとその後ろ姿を見つめていたが振り返ることはなかった。