第31章 忍び寄る終焉※
── お前を医療班として来週任務に同行して欲しいんだとさ
抱きしめられながら耳に響いた低い声が官能的で何だか恥ずかしくなったけど、内容はただの任務の依頼だった。
だからすぐに了承したのに、宇髄さんの声は途端に不満気になる。
不死川さんの命令なら仕方ないし、わざわざ宇髄さんに聞いたのは私が彼の継子だからだ。
休暇中なのは間違い無いけど、宇髄さんだってずっと休みなわけじゃ無いし、家の中にずっといてもつまらない。
炭治郎達が頑張って鍛錬しているのを見ると私も頑張ろうと思えていたし、瑠璃さんもいなくなってしまうなら任務は気が紛れていい。
それなら産屋敷様の調合も再開させたい。
休めと言われたからありがたく休んではいたが、そろそろ体も鈍るしちょうどいいと思っていた。
「俺ならほの花との時間が無くなるのは派手に不満だけど、お前は不満じゃねぇのかよ?!」
「ええ?!だ、だって天元も休みってわけじゃないじゃん?!」
「そりゃ、そうだけどよ!お前、任務が始まったら薬師の仕事も始まって、めちゃくちゃ忙しいじゃねぇかよ!ちょっとした時間でもこうやって抱きしめたりしてぇのによ…。」
どんどん声は小さくなっていき、その声は子どものように不満を露わにしている。
宇髄さんがこの休み期間中、私との時間を一番に考えてくれていたのは知っている。
それは嬉しいことだけど、遅かれ早かれ任務は始まるし、元の生活に戻るだけのことだ。
私だってずっと宇髄さんの腕のなかで過ごせたら幸せだとは思うけど、そうもいかない。
「私も天元と一緒に過ごすの嬉しいけど、任務なら仕方ないよ。帰ってきたらいつもみたいに、抱っこしてね?」
「よーし、まかせろ…?派手に抱き潰して次の日は任務行けねぇようにしてやるわ…。」
「ちょっ?!危ない考えはやめてよ!?不死川さんに迷惑がかかっちゃうよ…?」
「俺には迷惑かかっていいのかよ!?あーもー、鬼殺隊なんかにするんじゃなかったぜ…。此処にずーっといりゃぁいいのによぉ…。」
ごろごろと猫みたいに甘えてくる宇髄さんは後ろから私の後頭部に自分の顔を擦り付けてくる。何だか甘えん坊で可愛いので腰に回っている手を掴むと自分のそれと絡ませてみた。