第31章 忍び寄る終焉※
漸く俺の出番かと思い、ほの花に口づけを落としたのは良いが、その僅か数秒後に体を離されて俺を見上げてきた。
色々とヤる気満々だったのに早々に離されたことでもちろん不満が溜まる。
「…ンだよ…?口づけさせろよ。なぁ?ほの花」
そう言って耳を甘噛みしてやると顔を赤く染めて目を彷徨わせたが、小さな声で「は、話がある、って…!」と呟くので、潔くその話題を思い出す。
そうだった…。
不死川の任務の話をコイツに話さなければいけなかったのだ。
しかし、後回しにしたい。せっかくほの花を愛でる機会がやってきたと言うのに何故こんな時に任務の話…?!
だけど、目の前で首を傾げているほの花は何の話なのか若干ワクワクしているような視線を向けてくる。
そんな顔で見られてしまえば、俺の決意は簡単に揺らぐ。
「…はぁー…、仕方ねぇな。」
そう言うと膝の上から瞬時に降り立とうとするほの花の腰に慌てて腕を回した。
「ひゃぁ、え、…?!せ、正座するだけ、だよ?」
「誰も見てねぇんだから此処にいろ。」
頸に唇を寄せながら腰を引き寄せると再び膝の上に乗せれば、大人しくそこに収まるほの花を後ろから抱きしめた。
「…不死川がよ、お前を医療班として来週任務に同行して欲しいんだとさ。」
「あ、そうなの?分かった!」
「………おい、もっと悩め!!長期休暇中なんだぞ?!」
あまりに元気のいい二つ返事に俺の方が狼狽えた。何なんだよ、コイツは。
いくら医療班と言えど危険は伴う。
ほの花は戦えちまうから余計に何かあれば手を出しちまうだろうし、俺としては心配で仕方ないと言うのに。
しかし、当の本人は素知らぬ顔でにこやかに了承する始末。
「え?だって風柱様の命令でしょ?仕方なくない?」
「長期休暇中なのにお館様に許可とったのか?とか気にならねぇの?!」
「全く?え?変?」
いや、変だろ。
俺なら何で休みなのに任務行かされなきゃならんのだ!って荒れ狂う。せっかくほの花とのゆっくり過ごす機会が潰されたら腹が立つし、経緯を事細かに確認する。
それがお館様も了承していると聞いて漸く納得すると思うのに。