第31章 忍び寄る終焉※
屋敷に帰ってくると、部屋の前で別れて私は宇髄さんの部屋に戻った。
「ただいま〜。」と声をかけると「おー」と彼の声が返ってきたので目尻を下げて襖を開けた。
「おかえり」
任務の報告書でも書いていたのか筆と墨が出ていた。私が部屋に入るとご尊顔をこちらに向けて微笑んでくれる。
「うん。ただいま…お仕事中?なら外出てようか?」
「待て待て。もう此処にいろ。派手にほの花不足なんだぞ?もうすぐ終わるからよ。此処に来いよ?」
そう言ってポンポンと隣を叩く宇髄さん。
隣に座れと言うことらしい。
邪魔していいのか?と思いながらもいそいそとそこに向かって座るとすぐに腰を引き寄せられた。
「…楽しかったか?」
「うん!楽しかったよ!」
「そりゃぁ良かった。ちょっとだけ待ってろよ。すぐ仕上げちまうから。」
そう言って筆を走らせる宇髄さんの横顔を見るとドキンと胸がときめく。
本当にこの人は素敵な人だ。私には勿体無いほどに。
見慣れることなどないのでは?と思うほど毎日毎日彼に恋をしている状態だ。
真剣に書に向かっているその顔は益々格好いいのだから困り者だ。
借りてきた猫みたいにその場でカチンコチンに固まっているといつの間にか筆を置いた宇髄さんがこちらを見ていた。
「へ、…え?な、なに?」
「いや、それはこっちの台詞なんだけど。チラチラと横目で俺のこと見ちゃって〜。気づいてんだぜ?そんなに男前だったか?」
そう言って自信満々な顔でこちらを見遣る宇髄さんに目を合わせることもできずに俯いた。
こっそりと見ていたと思っていたのにバレていたと言うのが恥ずかしくて仕方ないのだ。
しかし、見ていたのは本当なので少しだけ視線を上げるとコクンと頷く。
取り繕ったところでバレているのだから意味がないことだ。
「…真剣な顔も格好いいな、って見てた。」
「ハハッ、そりゃどーも。心配しなくてもほの花もド派手に可愛いぞ。」
「…宇髄さんにだけ…そう思われてればいいや。もう終わったの?」
「ああ。終わったからほの花を愛でるかな。」
腰にあった手が少し上がって、もう片方の手で膝下に手を入れられると抱き上げられて膝に乗せられた。
どちらかともなく唇を寄せると熱い口づけが始まった。