第31章 忍び寄る終焉※
「お土産買っていきますか?」
お会計をしてくれた瑠璃さんにそう問えば、あからさまに嫌な顔をして首を振る。
「流石に昨日買ってきたばかりだし、要らないでしょ。」
「それもそうですね。朝食べたお団子美味しかったです〜!」
「そう言えばあんたにお熱のハガネヅカって男もみたらし団子ばっかりすごい買ってたわよ。」
「お、お熱って…!やめてくださいよぉ。鋼鐡塚さん、みたらし団子好きなんですかね。へぇ〜…。」
鋼鐡塚さんが甘味好きだなんていう情報は知らないし、あんな偏屈なのに甘味好きだなんて少しだけ可愛い。
「天元には会ったことを内緒にしとくからあなたも言わないのよ?どうせまた怒り狂って死ぬほど抱き潰される羽目になるだけよ。」
「ああ……、えと、はい。わかりました。」
宇髄さんはあんなに美丈夫なのに何であんなに怒るんだろう?まぁ、顔だけではないけど、私からしたら宇髄さん以上の人なんて存在しないのに。
「ごちそうさまでした」と頭を下げると笑顔を返されてそのまま並んで歩き出す。
こうやって瑠璃さんと並んで歩くのはもう数える程しかないだろう。いや、下手したら今日が最後かもしれない。
今日話した内容なんて"私がいなくなっても…"ということを予感させるようなものばかり。
寂しくて寂しくて仕方なくても
別れはいつだって突然だ。
彼女の人生を邪魔することは許されない。
「瑠璃さん、ありがとうございました。落ち着いたら…また遊びに来てくださいね。待ってます。」
「ええ。死ぬわけじゃないんだからまた会えるわ。ほの花、抱え込まないで。住むところが決まったら手紙を送るから、そうしたら遊びに来てもいいわよ。」
「あ、…は、はい!遊びに行きます…!絶対!」
これで終わりだなんてことはない。
こんなに寂しくてたまらないのは、さっき瑠璃さんに指摘されたことが全てだ。
私は唯一話しやすかった瑠璃さんがいなくなってしまうのが悲しくてたまらなかっただけ。
問題は私にある。
ちゃんと心に渦巻いているそれに見切りをつけなければ、彼女の言う通り本当の意味での幸せにはなれないのだと思う。