第31章 忍び寄る終焉※
頼んだ甘味はいつものように本当に美味しくて泣いた後の荒んだ心を潤してくれるように感じた。
豆大福もあんみつも水饅頭も葛切りも…
全部平らげると甘さが体に染み渡っていき、漸く満足してお茶を啜った。
「はぁ〜…美味しかったです〜…。」
「本当に全部食べたの…。すごいわね、ほの花。」
若干呆れたような表情でこちらを見ている瑠璃さんだけど、これくらいではまだ腹四分目くらいだ。あの食べ放題をした時は此の何倍もの量を食べまくったせいで胃腸がやられたけど、これくらいならば軽いオヤツ感覚だ。
「はい!余裕ですよ。…瑠璃さんと一緒に甘味食べれて嬉しかったです。ご忠告も、ありがとうございます。」
瑠璃さんの言葉はズドンと石のように頭に入ってきた。
── 天元はあなたのために命をかけることがあるかもしれない。でも、あなたは大人しく守られていなさいね。余計なこと考えたら駄目。分かった?
結局、「わかった」とは言えずに曖昧に笑みを返すことしかできなかった。
だって、考えただけで物凄く嫌だった。
私のために命をかける…?
そんな必要はない。
しなくていい。
何で宇髄さんが居なくなるの?
何で宇髄さんが傷つくの?
私を守って?
大人しく守られるくらいなら鬼殺隊にはならなかった。
最初は鎹鴉が欲しかったから。
でも、彼の継子として誰が見ても恥ずかしくないと思ってもらえるように必死に頑張ってきた。
私だって命をかける覚悟はあるんだ。
だけど、そんなことを言おうものならきっと心配される。宇髄さんにも言われてしまうかもしれない。
だったら…大人しく守られるということを受け入れたフリをしよう。
私だって死にたいわけじゃない。
死なないように鍛錬だってしてるし、いざとなれば…私には稀血がある。
あの量であの時の鬼は悶え苦しんでいたのだからいざとなったらこれを盾に宇髄さんを守れる。
出血死にならない量なら多少の出血なんてかすり傷だ。
こんな考えは危ないことなのかもしれない。
でも、いざという時の備えはちゃんとしておきたい。
大切な人を守るためにも。