第31章 忍び寄る終焉※
ほの花が自分のことをよく分かっていないのは知っていたので、ハガネヅカという男に好意を寄せられていることに気づかなかったというのは不思議じゃない。
それは天元だって分かってる筈なのに、あの男はほの花に関してはここぞとばかりに融通が効かない。
それくらい許してあげなさいよ…と呆れるほどの溺愛っぷり。
ほの花が嫌がってないところを見るとあの二人はお似合いなのは間違いない。
「とにかく…私がいなくなってもちゃんと天元には甘えて、ゆくゆくでもいいからあの三人にも本音で話せるようになるといいわ。あなたが思ってるほど気にしてないわよ。」
「…宇髄さんがいくら良いって言ってくれても、あの三人の元奥様が気にしてないって言ってくれても、ふとした時に思い出しちゃうんです。…私なんかいない方がよかったかなって…」
ちょうど「お待たせしました〜。」と元気な店員さんが甘味を持ってきたので笑顔を向けるほの花だが、その顔は引き攣っている。
天元は失敗したわ。
あの三人との関係を解消する前にこの子の蟠りをちゃんと解消させてあげないとこの子は本当の意味で幸せになれない。
"自分なんかいない方が良かった"なんて…
此処まで思わせたのは天元の落ち度。
「…そんなことないわ。ほの花は悪くない。さ、食べましょ。」
「は、はい…!」
甘味を食べてる時だけは忘れられるのだろうか。
少しだけでもいいから忘れて欲しい。
このままではいつかほの花は天元と幸せになる前に思い悩んでこの場から去るのではないかと言う最悪の末路が思い浮かんでしまう。
「ねぇ、ほの花。」
「はい?」
「天元はあなたのために命をかけることがあるかもしれない。でも、あなたは大人しく守られていなさいね。余計なこと考えたら駄目。分かった?」
天元が何の仕事をしているのか詳しいことは知らない。でも、たまに細かい傷があちこちに出来ているのを見ると危ない仕事をしているのだろう。
万が一の時、絶対この子は天元を助けるためなら命をかけてしまうと思う。
生きていようが死んでいようが
遅かれ早かれ
ほの花は自分の存在を蔑ろにする時が来る気がする。
そんな予感当たって欲しくないけど。
そんな気しかしない。