第31章 忍び寄る終焉※
店の暖簾をくぐれば、店主のおじさんが声をかけてくれた。
昨日の今日で一体何回来る気なのだ?と言われそうだが、そうは言っても隣に居るこの子は大の甘味好き。
朝から朝餉の後にみたらし団子をたらふく食べるくらい大好きなのだ。
「あれ、ほの花ちゃん!と昨日の姉ちゃん!また来てくれたのかい?」
「今日はこちらで頂こうと思って。店主さんがほの花に会いたそうだったから連れてきたわ。」
「ひぇ、る、瑠璃さん!?」
気のいいおじさんだけど、常連のほの花のことをよく知っていて、昨日も持ち帰りで買いに行った時私のことも覚えていてくれたようで嬉しかった。
「ハッハッハッ!!ほの花ちゃんもお嬢ちゃんもどちらも大歓迎さ!ま、座ってよ。」
笑いながらも店内に促されたのでほの花の手を引いて中に入ると、案内された席に座った。
すっかり涙は止まっているが、まだ目が赤い。
我慢していたものが私の言葉によって氷のように溶けていったのだろう。
「…そのひょっとこのお面が物凄く不審者っぽかったから外させたけどね。」
「えぇ?!よ、よく外してくれましたね…?めちゃくちゃ偏屈な人なんですよ?」
「あら、無理やり外してやったの。くのいちのなのよ?それくらい造作もないわ。」
「……さ、流石です。」
席に着くとすぐにひょっとこ男の話に戻すと興味深そうにこちらを向いたほの花に話を続ける。
「だって初対面で『ほの花の知り合いか?』なんて不審でしょ?鼻を明かしてやろうと思ったのに急にお金を渡されたのよ。」
「へ?お、お金?何のお金ですか?」
「昨日買った甘味代よ。『ほの花に食わせてやってくれ』って。自分からだとは名乗らなくていいって言われたし、何だか天元が怒りそうな気しかしなかったから昨日は言わなかったけど…。」
「…瑠璃さん、大正解です。もう流石としか言いようがありません。隠すのも変なのでもう言いますね。その人…鋼鐡塚さんは先日、宇髄さんと喧嘩することになったきっかけの男性です…。たまたまこの町に来ていたようで宇髄さんとも偶然あったみたいで…。」
何となくそうじゃないかとは思っていたけど、まさか当たっていたなんて、私もその男とバッタリ会うなんて相当な強運ね。