第31章 忍び寄る終焉※
ほの花のことを此処最近よく見ていた。
思ったよりも嫌いじゃないし、妹みたいだと思い始めてしまったからこそ気づいたことがある。
あの子が本当は天元の嫁になることよりも気にしていることの存在を。
雛鶴とまきをと須磨だ。
天元が選んだのはほの花。それは周知の事実で私から見てもあの三人に恋心の未練はまるでない。
要するに全く気にする必要はない。
でも、ほの花の心の中にはずっと蟠りがあるんだと気づいたのだ。
何故気づいたか?
自分とあの三人への態度の差だ。
もちろん私はほの花に酷いことをずっとしてきたから言いやすいのだろうとは思ったが、それだけじゃないと言うことはすぐにわかった。
毎日ひとつ屋根の下で暮らしているのに、事あるごとにお礼と言って贈り物をして、お風呂の順番は頑なに一番最後。
天元とあの三人のうちの誰かが話していたら、入らずにそっとその場を離れる。
あの三人の前で天元がベタベタと触ってきた時のほの花の気まずそうな顔。
誰も気にしていないことをあの子はずっと気にしている。嬉しそうに笑ったかと思うと、フッと顔を曇らせることがある。
気がかりなのはこの子のことだけだった。
こんな感じで本当に心から幸せになれるのだろうか。
このまま天元の嫁になってしまえば、ほの花は蟠りを抱えたまま人生を全うすることになる。それは本当の幸せなのだろうか。
私の願いはただひとつ。
命まで奪おうとしてしまったけど心優しいこの子の心からの幸せ。
隣で涙を堪えながら必死に地面を見つめているほの花を見て背中をポンと叩いた。
「ねぇ、ほの花。天元はあなたのことを愛してるわよ。いざという時、あの三人よりも命をかけてあなたを守るだろうと簡単に予測できるほどにね。でも、今自分の立場を受け入れないとあなたがその前に潰れるわ。」
こぼれ落ちていく涙は図星の証拠。
どれほど我慢していたか。
この生活が苦しかったことか。
心優しいからこそずっと一人で抱えんでいたのだ。
言えば、人によっては贅沢な悩みだと思うだろう。
でも、違う。
この子は自分よりももっともっと天元のことが大切で、雛鶴もまきをも須磨も大切なだけ。
そこが捨てられないだけ。