第31章 忍び寄る終焉※
瑠璃さんのお詫びの着物はとても素敵な仕上がりでそれを持つと真っ直ぐに甘味屋さんに向かった。
「素敵でしたねぇ!着たところちゃんと見たかったです。」
「あら、試着したじゃない。」
「そうですけど…、一緒に着てお出かけしたかったです。」
瑠璃さんは「フフ」と笑って軽くあしらわれてしまったけど、本当に寂しい。
宇髄さんの愚痴を誰かに言いたいわけじゃない。
そうじゃないけど、私はずっとあの家で浮いてる気がしてるんだ。
継子というだけなら感じなかったことも、婚約者と名前を変えてしまうと、宇髄さんがいなければよそ者のような気がしてしまっていた。
「…ほの花はもっと自信を持つべきね。」
「自信?」
突然、口を開いたかと思うと、瑠璃さんはそんなことを言い出した。
一体何のことだろうか。
「天元が選んだのはほの花なのよ?遠慮することないの。あの家で何故あなたがいつも小さくなっているのか不思議だったのよ。」
「え?!小さくなんてなってないですよ?」
「なってるわ。いつも遠慮しがちで我儘の一つも言わないし、天元がいてもそれはあまり変わらない。それって幸せ?苦しくない?」
どうしてか分からない。
でも、それを言われた瞬間、鼻の奥がツンとした。目頭にたまる其れを素早く拭い取ると必死に笑顔を作った。
「そんなことないですよ。幸せです。」
「嘘よ。あなたが本当に天元のことを愛しているのは認めるわ。十分すぎるほどの愛をアイツはあなたから貰ってる。でも、愛してはいても、あなたは天元と一緒になることを心の何処かで望んでないんじゃないの?」
やめて
やめてください。
そんなことない。
私は、ちゃんと婚約者として彼と添い遂げたい。
「だからあんなにもいつも小さくなってるのよ。ほの花、あなたはあの三人とのことを解消してまで一緒になることは望んでなかったんでしょう?」
「そんなこと、ありません。宇髄さんのお嫁さんになりたいです。」
「なら覚悟ができてないのね。あの三人に祝われる覚悟がないのよ。自分が壊してしまった幸せを受け入れることができないんでしょ?」
溜まっていた涙が一筋、頬に伝った。