第31章 忍び寄る終焉※
宇髄さんに揶揄われながら身支度を整えると、瑠璃さんと一緒に家を出た。
初めは誘うのも一苦労だった。
大好きな宇髄さんの元許嫁ということで嫉妬もしたし、負けたくないと思っていた。
でも、今は…?
今は本当に大切な存在になった。
「『早く帰ってこい』って私にまで言ってくるのよ?ほの花のこと取って食いやしないって言うのに。」
「私は『甘味を食べ過ぎんな』と言われました。宇髄さんと一緒の時しかそんなにたくさん食べないのに失礼しちゃいますよ!」
こんな風に大好きな人の愚痴を言い合える存在はとても貴重だった。
三人の奥様たちのことは大好きだ。
彼女達も大切な存在だと言うのには変わらない。
でも、彼女達に宇髄さんの愚痴は言えない。
私が申し訳ないと一線を引いてるからだ。
雛鶴さんも
まきをさんも
須磨さんも
きっともう何とも思っていないのだと思うけど、気にしてしまうのは…私の存在のせいで関係を解消する羽目になったからだ。
私さえいなかったらそんなことにはならなかった。
ずっと何でこんなにも瑠璃さんに帰って欲しくないのか考えていた。
瑠璃さんは私と出会う前に関係を解消していたこともあり、私のせいではないというのが明白だった。
唯一、宇髄さんとの関係を解消するきっかけになった日々を知らない人なのだ。
宇髄さんが恋人にしてくれてことはもちろん嬉しい。婚約者だと言ってくれたのももちろん嬉しいけど。
あの三人は私に見せないようにして知らないだけで物凄く悲しくて、ひょっとしたら枕を濡らす日々もあったかもしれない。
私のせいでそんなことになったのだから、彼女達には言えなかった。
宇髄さんと喧嘩したとしても、彼女達に愚痴を言うことはなかった。"譲ってもらったくせに"という言葉が最初に思い浮かんでしまい、とでもできなかった。
そんな時、瑠璃さんがきてくれて、嫌われていたけど思いっきり詰ってくれたことが返って気持ちよかった。
大切な人を奪っておきながらずっと優しくされ続けるのは申し訳ないと思ってしまうのだ。
たとえ其処に他の意図がなくとも。
私の心の蟠りは解消しない限りずっと思い続けること。