第31章 忍び寄る終焉※
「瑠璃さんと出かけてくる」と満面の笑みで言われたのは朝方のこと。
"またかよ…"と先越されたことに項垂れながらも瑠璃はもうすぐ居なくなるから譲ってやるかという想いも少なからずある。
自分を納得させると朝ごはんの後にせっせと鏡台で化粧をするほの花を後ろから抱きしめた。
「何処行くんだよ?」
「呉服屋さんに着物を取りに行ってくる!あとね?甘味屋さんに付き合ってくれるって言ってくれたの!!」
「また食うんかよ?!朝みたらし団子食ってたじゃねぇかよ。五本も!」
「何言ってるの?!私、あと三十本くらい食べれるからたいしたことないない!」
数の問題ではないのだが、得意げにそう言うほの花にため息を吐いた。美味そうに甘味を食べる姿は可愛いし、こちらまで幸せな気分になるのだから食べさせてやりたい気持ちは山々だが、食べ始めると止まらなくて飯を食べなくなるので止めるのもまた俺の仕事だと思っている。
「…瑠璃に程々にしてやれって言っておかねぇとな。」
「失敬だなぁ!!私、そんな食べないよ!食べ放題に行くんじゃないんだよ?!いつもたくさん食べちゃうのは天元が甘やかしてくれるからでしょ?他の人と行くときは自重してるよ〜。」
そう言われてよく考えてみると、確かに二人で甘味処に行った時はここぞとばかりに食べさせてやっていることを思い出した。
甘味を食べている時のほの花の幸せそうな顔がすげぇ好きだって言うのもあるけど、俺は基本的にほの花には甘い。
「確かにそうかもしれねぇ…けど!俺はいいんだわ!自分の女甘やかして何が悪ぃ!?」
「べ、別に悪くない、けど…たくさん食べるのは天元が甘やかしてくれるからだってことだよ〜。だから今日は食べ過ぎません!」
帰ってきたら不死川の任務の件を聞かなければいけない。
聞かずともほの花ならば二つ返事で了承するのは目に見えているが、本人の意思なしには決められない。
「楽しんでこいよ。終わったら俺の機嫌とってくれよ?」
「な、あ、あのへ、変なことはしないからね?!」
「変なことって?」
「は、え、も、う!知らない!」
耳まで真っ赤なほの花が愛おしくて、化粧をしている彼女の頸に唇を乗せた。