第6章 君思ふ、それは必然
贈り物は誰のものなのか。
三人のうちの誰かということ以外分からないが、大切なものには変わりない。
ほんの少しだけ…宇髄さんから贈り物をもらえる存在であることが羨ましく感じたが忘れよう。
私は継子。
私は継子。
ただの継子。
しばらく無言を貫いていると聴こえてくるのは長年一緒にいる護衛だった三人と私の足音だけ。
とても誰かと話したい気分ではないのだが、いつの間にかそこに違う足音が混ざったのに気付くのに時間がかかってしまった。
ふと隣を見ると失念していた出来事の相手。うっかりしていたとはいえ、この道を通り、ぼーっとしてしまっていたのは私の過失だ。
「やぁ、ほの花。横顔も綺麗だね。」
「き、清貴さん…。」
しまった…!そうだった…。
今日、ここを通ったら彼との約束を違えずに来てしまったことになる。彼との約束を守った上に、ご丁寧にお話までしてしまったというのであれば先ほどの出来心で"お嫁に行った方がいいのか"と考えてしまったことが脳裏をよぎる。
そう思ったのは事実だが、やはり顔を見てしまうと決心は鈍る。いや、決心など最初からしてなかった。私はただ逃げたかっただけだ。
宇髄さんから。
奥様たちを大事にする宇髄さんをこれ以上見ているのがつらかったから。
後ろを振り返ると正宗たちがハァっとため息を吐いている。恐らく何度も合図を出してくれていたのだろうが、私が気付かなかったのだ。
考え事をすると他のことが手につかなくなるのは私の悪い癖だ。
「来てくれてありがとう。お茶でもしないか?ご馳走するよ。あ、君たちは帰ってくれていいよ?あとで僕が送るから。」
急に手首を掴まれて立ち止まると、正宗たちに向かいひらひらと手を振る。
「え、ご、ごめんなさい。私、頼まれたおつかいに来ただけで…、帰らないといけないんです。」
「ああ、その包み?だったらそこの三人に頼んで持って帰ってもらったら?」
清貴さんの提案は至極真っ当。
そもそもお遣いに来て、こんな気分が沈まなければすぐにでもしのぶさんのお宅にお邪魔しようとしてたくせに、"帰らないといけない"なんてどの口が言うのだ。