第31章 忍び寄る終焉※
そろそろ戻ってくるかなと思いながらも、なかなか帰ってこない宇髄さんに淹れたお茶が冷めていくのを膝を抱えて見ていた。
瑠璃さんは私が部屋を出た後すぐに出かけてしまったようだし、手持ち無沙汰だ。
薬の調合でもしたいけど、やっているのがバレたらきっと宇髄さんに怒られてしまう。
"長期休暇中だろ?"と。
休みが嫌なわけではない。でも、周りは任務があったりするのに自分だけ休みなのは少しつまらない。
もちろん一緒に休みを取るなんて無理な話だけど、暇を持て余すというのはまさにこのことで。
つい先日まで忙しなく働いていた私からすると正直、この時間はどうしたもんかと頭を悩ますところだ。
(…早く、帰ってこないかなぁ。天元…)
心の中でそう溢した時、縁側に音がして顔を上げた瞬間、襖が開かれてその先にいた人物に勝手に顔が緩んでしまった。
立ち上がろうとして一瞬下を向いた間にふわりと包まれた体からは大好きな匂いがした。
立ち上がる必要もなくなり、その場で彼の背中に手を回すとぎゅっと抱きついた。
「…おかえり天元。待ってたよ」
「…ん。ただいま。ほの花が待っててくれんの派手に良いな。てっきり隣の部屋に気配がなかったから瑠璃と出かけたのかと思ったぜ。」
私の頭を撫でてくれる宇髄さんの手は大きくて簡単に収まってしまうけど、安心感でいっぱいになる。
「ま、まぁ…一瞬一緒に行こうかと思ったけど、天元に怒られるかなって思って待ってた。」
「おい、行こうと思ったんかよ。」
どうやら少し苛ついたご様子で、抱きしめる手に力を入れられると骨が軋んで悶え苦しむのは私だけ。
「ちょ、いででで!ご、ごめんって!でも、天元に会いたかったのは本当だもん…!」
「俺が腹立たしい出来事に遭遇してたっつーのに!お前は、このっ!こうしてやる!!」
「ちょ、や、やめ、あはははははっ!!!やめてぇ、やめ!やめてーー!あっははははっ!」
え?怒っていたのでは?
何故か抱きしめられたまま脇腹を擽られるという拷問を始めた宇髄さんだけど、その力に叶うわけもなくただただ私は擽ったさに耐えるしかなかった。