第31章 忍び寄る終焉※
「そ、そうですか。お会いになったんですね。しゅ、修羅場…。」
「おい、声に出てんぞ。」
「正宗様。ハガネヅカ様とはどなたなんですか?」
正宗の隣にいた雛鶴が鋼鐡塚という名前を初めて聞いたのだろう。不思議そうに首を傾げている。
「ああ、え、えっと…。」
しかし、俺に気を遣っているのか言い淀むその様子に助け舟を出してやることにした。
此処で取り繕っても事実は消えない。
「構わねぇって。俺のことから気にすんな。」
「あ、えーと…はい。雛さん、鋼鐡塚様と言うのはほの花様に思いを寄せている刀鍛冶の方です。」
「ええ?!ほの花さんに?!それは……。」
雛鶴がこちらを憐れむような顔で見てくるので顔が引き攣ってしまう。"お察しします"とでも言いたそうな顔をしているが、それよりもいつの間に正宗は雛鶴のことを"雛さん"と呼ぶようになったのだ?
益々デキてんじゃねぇのかと疑いたくなるが、二人の様子は穏やかで激しい愛を感じることはない。
気のせいか?まぁ、同じ家に住むもの同士仲良くしてもらうに越したことはない。
「何だよ。」
「…天元様、いくら腹が立ってもほの花さんに八つ当たりしたら駄目ですからね?」
「わぁーってるわ!」
「痕を残すのだけは禁止ですからね。」
指摘されなくともほの花に八つ当たりなどしない…とは言い切れなかったので、内心助かった。つい嫉妬をぶつけてしまうのはほの花が何でも受け止めてくれそうに優しいからだ。
そして俺がその優しさに甘えているからだ。
「あー、えっと、宇髄様。どんなお話をされたかは存じませんが、ほの花様にはあなたしか居られませんし、里で浮気などしていませんのでご安心を。」
「ああ。わかってる。邪魔したな。」
正宗の真剣な眼差しと共に出た言葉は誠実に満ち溢れていて信頼に値するし、ほの花は律儀な女だ。万が一、顔向けできないようなことをしたら恐らくのこのこと帰って来られないだろう。
自分を納得させるように頷くと自分の部屋に向かったが、瑠璃の部屋を通り越してもその部屋から話し声は聞こえてこない。
まさか…二人で出かけたのか?とため息を吐きながら部屋の襖を開けると、そこには溢れんばかりの笑顔のほの花がいて、思わず駆け寄って抱きしめた。