第31章 忍び寄る終焉※
回り道をして帰っていたくせに思ってもいない人物に出会してしまったことで結局、大した回り道にもならずに屋敷に戻る羽目になった。
どうせほの花はまだ瑠璃の部屋で女子話を繰り広げていることだろう。
縁側から出て行ったことを思い出してので、玄関から縁側に周ると雛鶴と正宗が二人で茶をしばいていた。
(…アイツら最近いつも一緒にいるな。デキてんのか?)
俺に気づくとにこやかな視線を向けられるが、慌てた様子はない。
雛鶴とはもう関係を解消しているのだから誰とどうなってもらっても構わないし、何なら正宗ならば大賛成だ。大切な家族には変わりないから幸せになってもらいたい。それだけだ。
「あら、天元様おかえりなさいませ。」
「宇髄様お帰りなさい。どうしたんですか?怖い顔をして。」
そう正宗から"顔が怖い"と指摘されると思い出すのはあの男のこと。少し目線を外すと、再び舌打ちが出てしまう。
しかし、そういえばコイツも鋼鐡塚のことは知っているじゃねぇか。少しばかり愚痴ってもバチは当たらないだろう。
「…どうか、しましたか?」
「さっきあの男に会った。」
「あの男…と申しますと…。」
「鋼鐡塚っていう刀鍛冶。」
俺の言葉に目を見開いて驚く正宗に今度はため息がこぼれ落ちた。
コイツは当時現場で鋼鐡塚とほの花の様子を見ている。もちろんほの花が浮気したなんてことは疑ってはいないが、あの男がほの花に惚れていたのは事実なのだから。
「ええ!?な、何故?!鋼鐡塚様が?!」
「別の剣士の刀を届けにきたらしい。たまたま蝶屋敷の近くで会ったら、声をかけられた。」
「はぁ?!え…、こ、ころ…?」
「してねぇよ。お前な、流石に殺すわけねぇだろ。まぁ、言い合っちまったけどよ。」
殺してないと聞くとホッと胸を撫で下ろした様子の正宗。随分な言種だ。
俺はほの花が絡むとまるで殺人鬼にでもなったのかと思わされるほど、心配されるのは何故だ。
まぁ、普段の溺愛ぶりからすれば当然かもしれないが。
流石にほの花が知ってる男を手にかけることはしない。そんなことしたらほの花に俺が嫌われるじゃねぇか。