第31章 忍び寄る終焉※
「そろそろ天元帰ってくるんじゃない?また不貞腐れるから部屋に帰ったら?」
瑠璃さんがそう言って時計を指差すと宇髄さんが出かけてから三時間近く経っていた。
何の用事かはわからないが、この時間から任務に行くのはおかしいし、それならばこの部屋に乗り込んで来そうなもの。
ということは消去法で別の用事だ。
そう時間もかからないと思った私は瑠璃さんの申し出に頷いた。
「そうですね!そうします〜!」
「私は後から出かけてくるわ。」
しかし、その言葉で固まってしまった。
出かける?出かけるってお出かけってこと?
「ええ?!わ、私も一緒に行きたい!!」
「はぁ?!明日行くでしょ?今日は一人で行ってくるわ。豆大福買ってきてあげるから留守番してなさい。」
「えー……。留守番…。」
此処でついていくことは造作もないが、これ以上宇髄さんを怒らせても後々困るのは自分だ。
瑠璃さんともうすぐ離れなければいけないという寂しさからついつい一緒にいたくなってしまっているが、限度を設けないと彼女も困るだろう。
「…分かりましたぁ。いってらっしゃい。ま、豆大福とみたらし団子も!!」
「はいはい。」
買ってきてもらうのだからと思い、懐からお金を渡そうとするとやんわりと止められた。
瑠璃さんをみればフルフルと首を振っている。
「え…、でも、みたらし団子も頼んじゃったし…。」
「いいわよ。それくらいお金あるわ。天元のだけど。」
そう言って悪戯っ子みたいな顔をして笑う瑠璃さんは綺麗な顔つきなのに可愛らしく感じた。
宇髄さんはケチじゃないし、"たかってくる!"とよく言っていたけど、その割には結構な額をポンと渡すような豪快な人。
そういうところ本当に男らしくて大好きだ。
「あ、あはは…。じゃ、じゃあ…宇髄さんにもご馳走様言わなきゃ!」
「そうして。私にべったりだと明日の朝、腰が痛くて動けない羽目になるわよ。」
「そ、それは困る!!絶対に困る!!」
「なら大人しく言うこと聞いておきなさい。ほら、早く部屋に戻ってお茶でも準備しておいたら?」
そう瑠璃さんに言われて漸く私は重い腰を上げると部屋を出た。
確かにあのままあそこにいたらもっと宇髄さんの機嫌を損ねるところだっただろう。
私は台所に寄ってお茶の準備をすると部屋に戻った。